応募者のコメント

さる山 旭山動物園/北海道

推薦者からの応募内容

推薦施設(担当者)説明

さる山

推薦理由

 旭山動物園のさる山に、アスレチックのような立派な遊具が設置されていました 。その一角の地面はコンクリートではなく、遊び道具になりそうなチップ状のものが敷き詰められ、カラフルなウンテイや平均台など、人間のアスレチック顔負けの設備となっています。横には数本の木もあり、夏場でもサルたちに程よい木陰を提供してくれそうです。また、水車の上に張り巡らされた丸太からは、さらに短い竹ざおのようなものが何本も下がっており、子ザルたちがぶら下がったり、転げ落ちそうになりながら遊んでいる姿を見ることができ、すばらしい運動神経に感服しました。どの遊具も、落ちそうに見えても落ちないといった、サル達の優れたバランス感覚を存分に見せてくれます。ストレスによって脱毛してしまった個体がいるとの説明書きがありましたが、このように立体的に体を動かすことのできる遊具が豊富に設置されたことで、ストレス発散に大きく役立つのではないかと思います。サル達の楽しそうに遊ぶ姿が楽しめるこれらの遊具を推薦します。


 飼育下のニホンザルは、探索、移動、採食行動が極端に減り、余暇の時間に行われる『昼寝』が1日の大半を占めます。 私はサル山の担当になった3年前より、この『昼寝ザル』たちを、なんとか生き生きした姿で飼育展示したいと思い、様々な環境エンリッチメントに取り組みはじめました。これらの取り組みにより、現在では、明らかに動きの違う、『ニホンザル』が観察でき、結果的に、動物の魅力を十分に伝えている動物舎になったのではないか?と思いますので恥ずかしながら自薦いたします。 以下、ビデオ、画像を参考にしながら御笑閲ください。

取り組み(1) 小箱コロコロ

目的:

摂餌時間の延長、学習能力の展示

解説:

木の箱の中にサルペレット(AS)が入っており、転がすことにより穴から1粒ずつ出る仕組みになっています。箱は20〜30個用意します。始めた当初は、木の箱の中にASを入れただけの単純な仕掛け(この当時は1回の摂餌時間2時間)でしたが、サルの学習の結果、摂餌時間が短くなってしまい、改良版を次々と投入しています。箱の中に、積み木が入っており、転がすとカラカラ音がして餌の有無がわからない、改良版『小箱コロコロ快音君』や、餌の出口に仕切りがしてあり、1方向からしか餌が出ない『小箱コロコロ一方通行』などです。しかし、すばらしいサルの学習能力の前に、改良機も見破られ、摂餌時間は約30分ほどで完食となります。現在、この取り組みは摂餌時間の延長ではなく、サルの学習能力の高さを展示する目的で行っています。

取り組み(2) 木くずの下には・・・

目的:

探索行動の展示、摂餌時間の延長

解説:

地面に敷かれているウッドチップの中にヒマワリ、ハトエ、麦を隠します。各園館で行われているメジャーなエンリッチメントだけあってサルにも大人気です。暇さえあれば探索行動をしています。

取り組み(3) 竹筒ユサユサ

目的:

探索行動の誘発、摂餌時間の延長

解説:

獣舎内に設置している竹には穴が開いており、その中にヒマワリ、ハトエ、麦が、入っています。竹を触る、揺する、振る、乗るのいずれかの動作で中の餌が出る仕組みになっています。ウッドチップ上に設置している竹筒は、出た餌がチップ内に入り込み、取り組み(2)との合わせ技で、さらに摂餌時間がかかるしくみです。

取り組み(4) ハチミツヌリヌリ

目的:

サルの体を観察、摂餌時間の延長

解説:

1日1回から3回、展示ガラスにハチミツを塗り、来園者に、オスザルの鋭い犬歯や指紋を観察してもらいます。摂餌時間は冬が約1時間(ハチミツが凍るため)、夏が約15分ほど。ハチミツを塗る前は手持ちパネルにて展示の趣旨を理解してもらう、通称『ペラペラ』を行なっています。『ペラペラ』にはサルの体についての説明文が書かれており、来園者の視点を犬歯や指紋に集中させる効果があります。

取り組み(5) 自然な枝遊び

目的:

サルの運動能力の展示

解説:

木の枝はサルの遊具になりやすく、地面に落ちているだけでもよく遊びます。さらに遊びを誘発するため、地面にスプリングを設置、その中に枝を挿し、人工立木を作り出しています。適度な揺れが幼獣の遊び心をくすぐり、揺れを利用して木に飛び移る姿も、しばしば観察で来ます。枝を入れた日は1日中遊んでおり、約1週間かけ、きれいに採食します。約1週間に1度、枝の入れ替えを行っています。

取り組み(6) ごはんヌリヌリ

目的:

サルの運動能力の展示

解説:

米と麦を炊飯器で焚き、おかゆ状態にしたものを、1日2回、壁や柱の高い場所に塗ります。サルはよじ登ったり、飛んだりして採食し、サル本来の運動能力が発揮される瞬間です。来園者からは、人が真似できないサルの動きを見て『サル、スゲー』などと歓喜の声が聞かれます。

取り組み(7) フリカケフィーダー

目的:

脱毛対策

解説:

ニホンザルの脱毛問題は多くの園館で問題になっており、解決策が求められています。当園での脱毛原因は、ほとんどがグルーミング中に毛を抜かれ食べられる、いわゆる『食毛』ケースです。
私の考える『食毛』のメカニズムは次の通りです(旭山での場合)。
(1)グルーミング中に何かの拍子で毛を抜いてしまう
(2)抜いた毛を食べてしまう
(3)食した結果、毛根の油脂や食感?で精神的な満足感を得てしまう
(4)癖になる
つまり食毛は、人で言えば爪を噛む『癖』のような行為だと考えています。 解決策として考えたのがこの『フリカケフィーダー』です。 この給餌機は寝室出口に設置してあり、サルが給餌機下をくぐると、粉末状に砕かれたASやフスマが体に降りかかる仕組みになっております。食毛癖のあるサルは、グルーミング中、毛の間から次々と出てくる餌の採取に必死で、毛を抜く暇がなくなるのでは?という発想です。 実際に給餌機、設置後では糞に混じる毛量が少なくなり、効果があると考えています。その他、『フリカケフィーダー』には摂餌時間延長の効果もあり、給餌機の周りは、体に降りかからなかった餌を、摂餌する数頭のサルが、常に滞在しています。この給餌器で、ある程度の改善は見られたものの、いまだに2頭の脱毛ザルがいる為、新たな工夫を考案中です。

取り組み(8) 芝生むしり

目的:

摂餌行動の展示

解説:

エキスパンドメタルの下には、各種雑草(芝、粟、麦、ヒエ、ヒマワリなど)が生えており、網の目から出てきた草をサルが摘み取ります。エキスパンドメタルは取り外しが可能で、草丈が伸びすぎた部分は、外してサルに摂餌してもらいます。数種類の草が植えてあるので、サルが選んで採食する様子も観察できます。

取り組み(9) カチンコチン餌

目的:

摂餌時間の延長、個体の順位・社会性の展示

解説:

0×30×20cmの氷柱の中に、リンゴ、カンショ、バナナ、オレンジなどを入れ、チェーンで、来園者近くの展示ガラス前に設置します。餌は約6時間かけながら溶けるので、摂餌時間の延長が可能です。また高順位なサルほど先に採食するため、来園者にも個体の順位や、サルの社会性が確認できます。また長時間給餌が続くため、優位個体が独占して摂餌する事がなく、劣位個体でも採食が可能で平均的給餌が行なえます。

取り組み(10) 看板

目的:

来園者にサル山での取り組みを知らせる、来園者へのエンリッチメント

解説:

来園者が疑問に思う『脱毛ザル』の存在を取り上げて、旭山動物園で行っている飼育的な工夫をパネルにて展示しています。来園者は獣舎内にちりばめられた工夫を知り、『ナルホド!ナルホド!』とサル飼育の面白さ、奥深さを感じており、よりいっそうニホンザルの虜になっております。

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