マレーグマがいないと思ったら、木の上に。狭い上野動物園では立体的に飼育場を活用している。しかも昔から植えてあった木を利用している。同じ敷地内にハクビシシンとコツメカワウソを飼育している。生活の時間差や小さな水場と陸を分けて、微妙に重なる同居は動物たちにとっても緊張感漂う自然の感覚を呼び起こしている。
昨年オープンした「クマたちの丘」のマレーグマ放飼場内には大きなシイとムクノキがあります。これらの木は元々この場所にあったもので、木登りが得意なマレーグマが木に登り、木の上で過ごす様子を展示したい、とこれらを残してマレーグマ放飼場が造られたそうです。
そんな人間側の思いを知ってか知らずか、昨年の秋頃から3頭いるうちの1頭が木に登るようになりました。毎日必ず登るというわけではありませんが、登れば、休んだり、樹皮や木の芽を食べたりと自由気ままに樹上での時間を楽しんでいるようです。あれよあれよと登り、木のてっぺん近くの細い枝の先にまで移動したりなどマレーグマの木登りの能力は、本当にすごいと思います。見ている方は落ちないかとハラハラしながらも、その場に釘付けになり、携帯でも何でも持てるカメラを必ず向けています。
昨年オープンした「クマたちの丘」には、冬眠室があり、昨年12月から今年3月まで、ツキノワグマ1頭が冬眠しました。冬眠の様子は、室内のカメラで撮影、冬眠室前にあるモニターに映し出され、誰でも見ることができます。冬眠展示は世界的にも珍しく、また単に展示するだけでなく、研究者の協力を得て、呼吸数、心拍数を測定する装置を導入し、データを採取、ほとんど知られていない冬眠のメカニズムついての解明も試みられています。更に、冬眠と一口に言っても種により異なることから、冬眠中のヘビやカメ、ヤマネ、リスも冬眠室の前や近くに展示され、その違いについての掲示もありました。
30年以上前、現園長が、多摩動物公園で飼育係だった時、動物園のクマが冬になってボーっとしているのは冬眠したいからではないかと考え、ようやく実現した展示だそうです。