応募者のコメント
本田 直也さん
- 本田さんは円山動物園のは虫類館担当10年間、熱心に研究を続けているが、平成14年にはヨウスコウワニの繁殖・飼育成功で動物園・水族館協会から繁殖賞をいただくなど成果を挙げておりエンリッチメント大賞候補として市推せんします。それ以外でも、平成17年にミズオオトカゲが産卵、2頭がふ化した内1頭は現在、元気に飼育されている。母親はその後死亡したが、実はかつてはミズオオトカゲはつがいで飼育されていたが産卵の7年前にオスは死亡した。7年間も抱卵していたものか単為生殖なのか現在、研究中だが、いずれにせよ稀なケースであり、種の保存の観点からも貴重です。ヨウスコウワニの場合もミズオオトカゲも飼育下では繁殖が非常にむずかしいが、本田さんは研究を重ね、は虫類が安心して産卵できる環境作りと体調管理に努めた結果、繁殖に成功したものです。
- 円山スネークアート展を成功させた。“なぜ多くの人は爬虫類・両生類を嫌うのだろうか”という副題で今年3月17日から31日まで、円山動物園内動物科学館ホールで展示会が行なわれたが、数多くの観客が訪れ、爬虫類・両生類の魅力をつたえる課題が達成され大成功のうちに閉幕した。本田さんは発案者であり実行委員会の中心人物として展示物と展示方法などすべてにわたって考案し成功に導いた。本田さんは幼少のころから爬虫類などの生き物と深く接し、爬虫類の特性を知りつくしているとともに、10年強におよぶ円山動物園爬虫類館担当として、爬虫類生棲にあった環境作りや北海道に生息する爬虫類の展示に努力するなど環境整備に多大な貢献をしており、大賞に値するものと考えます。
- 本田さんは動物園飼育員としての活動のほか、長年のわたる自己研鑽の結果、昨年、極めてむつかしい鷹匠の資格を取得した。北海道では初めてのこと。園内で飼育中の鳶、鷹、シロフクロウなどを飛翔させ来園者に喜ばれている。檻の中にじっとしているそれらの鳥類を見るだけでなく、野にある姿を彷彿とさせるフリーフライトはエンリッチメント大賞の対象となる「動物たちの暮らしについて来園者の理解が進むような取り組み」に値するものと考えます。
- 日本初、世界初・・・そのふたつを一人の飼育員が実現した。動物園の飼育下では特に難しいと言われ、生態、環境等、ほとんど知られていないカンボジアモエギハコガメの繁殖で動物園では世界初!ヨウスコウワニの繁殖で日本初!
本田氏は“繁殖例がないというのは動物たちは消耗品と同じだ!”という想いでいたという。2000年にはは虫類館の担当になってからは野生の中でのリズムを考える。季節によってワニは驚くほど体形が変わる!ルーチンワーク(ワンパターンの給餌等)をやめ、1年サイクルで徹底的に生理をコントロールする。
- ワニの繁殖に絶対条件の冬眠
海外では、完全な冬眠をさせた例はあるが、代わりに10月から1月初めまでエサなしにした。飢餓状態の時に高カロリーのエサをたくさん与えると、そこで繁殖のスイッチが入り、2〜3月に交尾期に入る。
- ワニは水中交尾のため、できるだけ水中にいるよう、工夫する。陸地に暖かい場所をなくすためスポットライトを消した。逆に水中には暖かいお湯を入れ、次に冷たい水を入れたりと水温にも変化をつけた。
- 刺激を与える。(これは幼稚園児が窓ガラスを叩いている時に交尾体勢に入ったのを見てピンときたという)。どうやらガラスを叩く音が互いに呼び合う声に似ているそうだ。
- 交尾期が終わったら、今度はメスの居心地をよくするため、陸地を暖かくし、一部をよしずで囲い、中に腐葉土とミズゴケを大量に敷き、上部からスポットライトを当て、産卵場所を作ってやる
- 20個の産卵後、すぐに食欲をみせたので、すぐに給餌し、体調の回復を図る
- 健康な卵に悪影響を与えないよう、無精卵の除去。
- 結果3頭の子ワニがかえる
本田氏は計画の中で描く、論理と1年サイクルの綿密なイメージを常にチェック!プラス動物の覇気や無気力にならないよう、メリハリのある飼育を心がけこの成功につながった。一般にはわかりにくい“は虫類のエンリッチメント”だが是非、特筆したい。