このたびの受賞を大変光栄に、そして本当にうれしく思います。それは、評価いただいた取組みは飼育スタッフによる手作りだからです。彼らはコンクリートとゴルフネットで囲われた旧ウサギ飼育場に木を打ちたて、土を運びこみ草を生やし、看板を手作りし飼育場を整備していきました。それは、傍目にはあたかも鳥たちが巣作りをしているような地道な作業でした。フライトの調教も手探りの連続でした。猛禽類の調教とは異質の、いわば“つきあう調教”。アフリカの漁村でみられる、魚の生ごみ掃除屋としてのアフリカハゲコウと住民が少し距離を置いた“共生的関係”のような手法です。
このプロジェクトの途中で、フライトの中止あるいは完全切羽を検討したこともありました。フライトトレーニング中に園外に逃飛させてしまったのです。動物園関係の仲間や野鳥関係者の協力もあり9日後に和歌山県にて保護しました。逃飛したハゲコウとともにやつれ果てて帰ってきたスタッフは「また、飛ばさせてほしい」と申し出てきました。フライトの断念もやむなしという園内の雰囲気の中、戸島園長(当時)の「スタッフの思いを支えよう」との判断でフライトが再開されました。調教鳥類のこととはいえ飼育動物の逃飛はあってはならないことであり、深く反省し、現在ではフライト時の気象条件による自主規制やGPS機の装着などの対策を実施しています。
今回、地方の施設のささやかな取り組みに目を留め、アフリカハゲコウというあまり有名ではないけれど素晴らしい鳥に魅せられた飼育スタッフの思いをくみ取っていだきました。フライトトレーニングによってもたらされた健康な体躯、風を読む表情(感性)、繁殖行動など鳥としてあたりまえの姿を評価いただいたものとあらためて感謝いたします。
秋吉台自然動物公園
園長 池辺祐介