受賞の声


 この度は奨励賞をいただき誠にありがとうございます。当園のフタコブラクダ(個体名ジャック♂)は28歳でかなりの高齢です。他園の事例を見てもフタコブラクダは高齢になると起立困難になるという課題があります。当園のフタコブラクダも同様に活動量が年々低下していました。そこで老化により起立困難になることを回避、もしくは少しでも遅らせることができたらと、自発的に起立・歩行をしてもらえるように環境を変えました。起立・歩行のきっかけとなるように給餌回数とフィーダーの設置や給餌場所を増やし、前肢にデータロガーを装着し、その活動量を記録しました。介入することで大幅に活動量が増加したということまでは示唆されていませんが、活動量に変化は表れました。今後も活動量が増加するように環境を改善したいと考えています。そして動物福祉を考えるうえで、まず基本的な健康管理ができていないといけません。当園のフタコブラクダはハズバンダリートレーニングにより毎日検温、毎月採血、定期的に体重測定を行って管理しています。正常値を知ることで異変に気づきやすくなるだけでなく、このデータは他園のフタコブラクダの飼育管理にも役に立てたらという気持ちです。現在は1頭のみで暮らしており、本来は群れで暮らす動物なのでそこを実現できないのは申し訳ない環境ではありますが、QOLの向上を目指しつつ、他園のフタコブラクダの飼育管理の役に立てるように今後もデータを残していきたいです。この取り組みは大阪ECO動物海洋専門学校生の卒業研究から始まり、データロガーでの行動記録は明治大学研究・知財戦略機構山本誉士特任准教授との共同研究により進めることができています。飼育管理ではチーム一丸となって取り組むことで誰が作業してもクオリティを維持することができています。継続的に進めるには個人技ではなく組織力と実感しています。今後もジャックが健康に長生きできるようにチーム一丸となって取り組んでいきたいと思います。

大阪市天王寺動物園
下村 幸治

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 飼育動物の高齢化はこれからの動物園が抱える大きな課題です。その点、高齢個体の生活の質の改善につながるハズバンダリートレーニングの重要性はますます高まっていくと思います。これからの動物園飼育員にとって、ハズバンダリートレーニングという技術は基礎技術になってくることでしょう。また、飼育環境の改善は、担当者個々人の感覚・感性だけに頼るのではなく、行動調査を行うなど科学的に実施していくことが重要だと思います。
 当園でも現場スタッフの努力によりそのような取組みが進みつつありますが、今回、フタコブラクダに関する取組みを奨励賞という形で評価いただけたことは非常に嬉しく思います。この受賞を励みとして、動物園全体のさらなる技術力向上を進めていきたいと思います。

大阪市天王寺動物園
園長 牧 慎一郎

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