よこはま動物園ズーラシア


報告者は 光田佳代 です。

訪問日は 2007年3月31日(土) です。


 旅行計画の情報収集中に以前から興味のあった「よこはま動物園ズーラシア」の公式ホームページを見ました。その中の「生命の共生、自然との調和」という言葉に目がとまりました。また、生態的展示にも興味を持ちました。

 横浜駅から相模線に乗り、約10分の所にある「鶴ヶ峰駅」で下車しました。その後、鶴ヶ峰バスターミナルから「よこはまズーラシア行き」のバスに乗り、約15分で目的地に到着しました。
  たくさんの荷物を持ったまま、園内をまわらなければいけないかと心配していましたが、入場券購入口付近にコインロッカーが設置されていたので荷物を預けることができました。 600円の入場券を購入しました。入園ゲートをくぐるとすぐにイベント案内の電光掲示板があり、そこで1日のスケジュールを確認できます。掲示板の横は、「アジアの熱帯雨林」の入り口となっていて、通路の両側には熱帯雨林帯にありそうな植物が植えられています。その景色は圧巻です。
 
 入園した瞬間に別の国に来たような気分になりました。何が待ち構えているのかわくわくしながら歩き始めました。

アジアの熱帯雨林で自然体験

  最初に出迎えてくれるのがインドゾウです。来園者はインドゾウの運動場をいろんな角度から見ることができます。
  運動場では、3頭のインドゾウがお互いに顔をあわせることができる環境となっています。オスのラスクマルは、メスたちと溝で隔てられた場所におり、彼女たちと鼻と鼻で触れ合っていました。運動場内に設置されているコンクリートの柱で彼らが頭をかく姿など、さまざまな行動を観察することができました。彼らは、1頭だけで1日を過ごすゾウよりも明るい表情をしているように見えました。水場も木陰もあり、特にメスゾウたちの方は自由に利用できる空間が広がっていました。

 次の展示場へ行く途中で突然もやもやとしたものが目の前に現れます。煙かと心配になりましたが、それは霧でした。これも、ズーラシアの生態的展示の一部のようです。人の手で作られた環境であるのに、まるで本当の自然の中にいる気分になれました。

 

 しばらく歩くと左の写真のように地面より高いところに作られた板張りの道が現れます。木のぬくもりを感じながら歩いていると葉食者であるフランソワルトン、ドゥクラングール、ダスキールトンたちが待ってくれています。
 彼らの檻の天井は高いのですが、地面は私たちのいる高さよりもさらに下にあります。だから、ほぼ同じ目線で彼らと対じすることができます。 来園者が彼らの生活環境にあわせて、少し高い位置から観察させてもらっている状態というわけです。
 高い木が植えられていて、その枝に別の枝がさまざまな方向に組まれていています。そのため立体的な空間が作られていました。彼らが木の上や金網をつたって、走り回る姿はとてもかわいらしかったです。彼らの動きを目でおっていたら、いつのまにか時間が経っていました。樹上生活の彼らと同じ目線になれたことは、とても新鮮でした。

 さらに歩いていくと、目の前には5匹のメスライオンが現われました。彼女たちはインドのギル森林の保護区内に数百匹しか生息していないと言われているインドライオンです。世界でも数少ないライオンが目の前にいることにとても感動しました。 オスライオンは、繁殖制限のため運動場にはいなかったので会うことができず、残念でした。 しかし、園内で繁殖可能な状態にあると知って驚きました。今までも繁殖に成功した例があるので、 これからも頑張ってほしいです。  
  運動場には、岩場や木陰があってライオンたちがゆっくりと休める場所が十分にありました。小屋のようになっている所には、足と口について説明されたハンズオンが設置されています。ハンズオンに実際に触れて学ぶことができるので大人も子どももライオンについて物知りになった気分になれます。

日本の山里を伝える

 ハクビシンが日本の山里の動物として紹介されていました。私はハクビシンに対して移入種であり、かつ害獣であるという印象を持っていたので、日本のゾーンに展示されていることを意外に思いました。でも、日本にいるのは事実なのでこのゾーンにいるのは当然かもしれません。
  もちろん、日本の代表的な一種でもあるツキノワグマも忘れてはいけません。 彼らの「生態紹介」を初めとして「町に現れる理由」そして「これからどのように共存していくか」という課題まで、4枚ほどのパネルで紹介されていました。彼らが町に現れるのには、山に餌となる木の実が少ないことなどが理由として挙げられるようです。山の開発などが原因のひとつになっているかもしれません。 パネルを読んだ時、里山の問題はその地域に住む人たちだけではなく、誰もが知るべきことだと改めて思いました。
  彼らの運動場には、日本の山にも生えているような下草が密生していました。また、運動場の奥には小さな滝もあります。すべてを再現することは不可能でも野生の環境に存在するものの一部を運動場に加えるだけでも、エンリッチメントとなっているなと思いました。

学習する

 各動物の前には、その動物の基本情報だけでなく、トピックスとして彼らの「意外な真実」や「個体紹介」などが掲載されています。
 休憩所や塀も利用して動物たちについて、さまざまなことが説明されています。 例えば、「なぜ1人なの?」というパネルがあります。 そこでは「その動物が野生で単独生活をおくっている」「繁殖制限中である」「現在仲間を探している」という理由を来園者にしっかりと伝えています。
 また、通路などには環境問題に関するパネルもいくつか設置されています。 左の写真のパネルでは汚染、交通事故そして人間の悪質ないたずらによって傷つけられた鳥たちのことなどが紹介されています。イラストやハンズオンが多く用いられており、大人だけでなく子供たちもじっくりとパネルを見つめて、環境問題を学んでいるようでした。
 世界中の動物たちの生息環境を歩きながら、それぞれの問題がそれぞれの地域だけの問題ではないことを実感しました。


感想

 全体的に動物たちとの距離が近く、観察にも適していると感じました。また、いたる所に解説パネルが設置されていたり、イベントがあったりと来園者が学べる環境がすでに用意されていることに感心しました。園内全体で環境問題についても呼びかけています。希少な動物を飼育して、人々に紹介するだけではなく、彼らをとおして私たちが考えるべきことを訴えかけています。それは、どんな言葉よりも重みがあり真実を伝えていると思いました。
 もうひとつ、すばらしいと思うのは、ズーラシアが世界の環境をただ再現しているわけではなく、その環境の中でさまざまな動物の繁殖をおこなっていることです。特に自然繁殖は、飼育動物たちの暮らしの豊かさを表す重要な項目のひとつではないでしょうか。それに成功しているズーラシアは、時代の先端を行くような動物園だと思いました。また、生まれてきた新しい命が家族と一緒にいきいきと生活しているのを見ることができるのも素晴らしいです。
 何度もズーラシアの住人に会いにいきたいと感じることができる、そんな動物園でした。 

 


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