視点についてもよく考えつくされています。冒頭に書いた、フラミンゴの池を通して、草食獣(シマウマ、ダチョウ)、肉食獣(ライオン)、擬岩にアンテロープが見える光景ですが、これは動物園の端にあるレストランから眺めることができます。レストランに行くには、植物で囲まれた小道を歩きます。うっそうとした小道を歩くと、先にレストランが見え、その空間に出て振り返ると、はるか遠く岩場までの風景が広がるのです。
複雑に入り組んだ園路にも、数々の工夫がされています。園路は複雑なのですが、次の進行方向にやや道幅が広がり開放空間をそちらに見せています。そのため、来園者はほとんど道を間違えることなく、自然に進むことができます。もちろん、順路を示す看板もたっていますが、日本のように看板の前で考え込む必要はありません。
レストランから見ると、遠くに連なって見えるシマウマやライオンも、それぞれ近くで見ることもできます。実は、この原理は岩場の塔の上から見ると一目瞭然です(写真右)。斜面を利用して、動物屋内施設・動物放飼場・堀・来園者通路・動物室内施設・動物放飼場・・・と連続させているのです。もちろん、屋内施設は岩のように見せたり、来園者の頭がじゃましないよう通路を低く下げ、植木を利用して隠れるよう工夫されています(左写真)。動物たちを、遠くからも、近くからも見れ、かつ景観を失わない工夫が細やかにされています。
こうしたものが1907年にできたという事実に驚くとともに、今まで「ピン!」とこなかったことが、やっと納得できました。ハーゲンベックを真似て作ったものは、しょせん”マネ”だったのです。ビューポイントの設定や、開放的空間と閉鎖的空間の使い分け、動物の行動や習性に対する理解など、今でもこの動物園から学ぶべきものは多い、と思いました。 |