2010年9月8日(水) @@環境パートナーシップオフィス EPO会議室
今回は、市民ZOOネットワーク初の試みとなるフィルムセミナー、映像鑑賞を主としたセミナーを開催しました。科学技術振興機構サイエンスチャンネルより「赤ちゃんがいっぱい」シリーズをセレクトし、ゲストにはこの番組を制作された映像プロデューサーの原田稔也さんをお招きしました。
この番組は、国内の動物園や水族館などでおこなわれているさまざまな取り組み、中でも特に、有意義な取り組みによる具体的な成果としての「動物の繁殖」に焦点を当てて、紹介しています。シリーズは現在26本制作されていますが、市民ZOOネットワークの「エンリッチメント大賞」とご縁のある動物園が取り上げられたものが少なくありません。今回はそういったものの中から3本をピックアップし、上映し、それぞれ原田さんに解説や感想などをお話しいただく、という形で開催しました。
1本目は、札幌市円山動物園のヨウスコウワニ。飼育担当の本田直也さんはエンリッチメント大賞2007(http://zoo-net.org/enrichment/award/2007/)で「動物園人賞」を受賞されています。
公私ともに研究を重ね、爬虫類飼育に熱心に取り組む本田さんの姿を追い、ヨウスコウワニの現状とその繁殖の実績を番組では紹介しています。番組中ではヨウスコウワニの貴重な求愛行動のシーンが登場しますが、長期間追跡しやっと撮影できた、というものではなく、求愛行動が起こる日を本田さんが正確に予測しロケを設定したため、わずか3日で撮影を終了した、という“秘話”も教えていただきました。
2本目は、埼玉県こども動物自然公園のコアラ。こども動物自然公園では園全体でさまざまなエンリッチメントを実施していますが、中でも特にコアラ舎での取り組みは活発で、エンリッチメント大賞2008(http://zoo-net.org/enrichment/award/2008/)で「動物園賞」を受賞しています。
そういった背景もあり、この回は特にエンリッチメントに着目して制作されています。番組中で、飼育担当の西方則男さんは、エンリッチメントには予想通りの効果がないこともあり、観察・評価して試行錯誤して改善してゆくことが大切である、ということを話されていました。そのように熱心に取り組む飼育担当者の姿が、原田さんが映像プロデューサーとして視聴者に伝えたいことだと話されていたのが印象的でした。
台風の影響により開始が少し遅れたこともあったため、時間の都合上、3本目が最後となってしまいました。最後は、多摩動物公園のオランウータン。ここのオランウータン舎はエンリッチメント大賞2005(http://zoo-net.org/enrichment/award/2005/)での「飼育施設部門 大賞」の受賞施設です。
2006年に生まれたミンピーを中心とした多摩で暮らすオランウータンたちの暮らしぶりを、飼育担当の黒鳥英俊さんが紹介する内容となっています。番組中では、新施設でのエンリッチメントの取り組みにより、オランウータンの暮らしにどのような変化が生じたかというような、事後評価の研究に関する話題も登場します。
オランウータンが一番最初の放送回であったため、用語や専門知識の解説がとても丁寧でいわゆる“こども向け”の内容で制作されたそうですが、だんだんと原田さんご自身の理解も進み、毎回説明を入れるのも面倒になり(笑)、後半の制作ではかなり“おとな向け”になってきたと振り返っていらっしゃいました。
会場には、オランウータンの回で番組に出演されていた黒鳥さん(現・上野動物園)や、番組の撮影に携わったカメラマンの中村さんにもご参加いただき、それぞれの立場での番組に対する思いや感想などについてコメントをいただくこともできました。参加者の皆さんからのたくさんの質問や、原田さんからの制作秘話などにより、鑑賞後のトークタイムもとても盛り上がっていました。
普段、文章あるいは写真・絵画などで、動物園や動物のことを表現する人は多いように思いますが、今回はまたそれらとは異なる「映像」という媒体で、何を表現し、伝えたいのか、制作者から直接お話を伺うことのできる大変興味深いセミナーとなりました。今後もこのような、フィルムセミナーは随時開催をしていきたいと思いますので、映像作品や制作者等のリクエストがございましたら、ぜひ市民ZOOネットワークまでお寄せ下さい。
綿貫宏史朗(市民ZOOネットワーク・スタッフ)
写真撮影・大木正美