市民ZOOネットワーク 8月セミナー開催報告

「ISIS(アイシス)と野生生物保全」
ゲスト:冨澤 奏子さん
  (ISISアジア太平洋/オーストラレーシア地域コーディネーター)

2012年 8月31 日(金) 環境パートナーシップオフィス セミナースペース

 

今年度初となる8月セミナーが8月31日に地球環境パートナーシッププラザ・セミナースペースにて開催されました。ISISで唯一の日本人職員であるISISアジア太平洋/オーストラレーシア地域コーディネーターの冨澤 奏子(とみさわかなこ) さんをゲストにお招きし、「ISISと野生生物保全」をテーマにISISの組織や冨沢さん自身の活動についてお話をうかがいました。

 

セミナーでは、そもそもISISとは一体なんだ?というところからお話を頂きました。

ISISとはInternational Species Information Systemの略であり、日本語に訳すと国際種情報システム機構で世界中の動物園水族館をはじめとする動物学的機関が飼育下繁殖による展示動物の維持や野生動物保全に必要な個体情報を一括して管理することを目的に1974年に設立されました。現在80か国以上800以上の機関がISISを利用しており、アメリカ動物園水族館協会やヨーロッパ動物園水族館協会など世界中の地域協会とも協働しています。
そのなかで、冨澤さんはISISアジア太平洋/オーストラレーシア地域コーディネーターとしてその地域内の各施設でISISで使用しているソフトウェアのトレーニングやワークショップなどさまざま活動をおこなっているそうです。

 

その後、冨澤さんのお話の中でデータを記録として残すことの重要性についての話をうかがいました。

ISISでは、ZIMSというソフトウェアを使って10000種25000個体の個体情報を管理しているそうです。
その1個体毎に詳細な情報、たとえば野生由来の個体なのか、飼育下生まれの個体ならばどの個体から生まれたのか、さらにはその個体が死んでしまった後もどこどこの博物館にはく製として寄贈されたなどの死後の情報まで残しているそうです。
また、各国でばらばらな動物の個体記録がすべてISISのZIMSで管理することによって各々の国の個体情報が世界的に共有でき、正確な世界水準の個体記録が残すことが可能になる。このことがISISの役目でもあるとおしゃっていました。
その他にもアラビアオリックスとマーコールの個体群管理、すなわち、個体記録の管理をしっかりおこなった種と個体記録の管理をほとんどおこなわなかった種とで個体数の増加や遺伝的多様性の維持に対する効果に大きな差がでたというデータを例に、個体群管理の重要性や遺伝的・行動的多様性の維持することの大切などが語られました。講演会中では多少専門的な内容もありましたが、冨沢さんのわかりやすいトークで解消され、とても和やかな雰囲気で講演会が終了しました。

 

ISISというとどこかで話には聞いたことがあるけど、実際どのような活動しているのか分からず、モヤモヤが僕の中で渦巻いていましたが、今回の講演会を通じてどのような組織で何を目的として活動しているのかが分かり、モヤモヤが晴れたような気がします。また、国内の動物園の情報を得る事で満足していた自分の視野が少し広がったように感じました。今後もこのような世界的活動に目を向けられるようなセミナーも、積極的に開催していきたいと感じました。

(市民ZOOネットワーク スタッフ 大崎 康平 / 写真 大木 正美)

 

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