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動物たちの豊かな暮らし

エンリッチメント大賞 2018

「エンリッチメント大賞2018」
― エンリッチメントの意図を異なる条件で実現! ―


 エンリッチメント大賞2018には、22件の取り組みに対して全国から32通の応募がありました。そのうち11件が一次審査(書類選考)を通過し、スタッフによる現地調査の後、8月30日に二次審査(審査委員会)がおこなわれました。そして、大賞1件、奨励賞1件、グッドアイディア賞1件が選ばれました!
  受賞した取り組みはそれぞれ、「対象動物種」や「飼育規模」、「管理体制や手法」などがまったく異なるものとなりました。しかし、「生息地での生活の再現」や「廃材の利用と創意工夫」、「不定期性の実現」といった環境エンリッチメントの基本手法のいずれかにのっとったものであり、エンリッチメントの意図が正しく踏まえられたうえで、それぞれの飼育状況での達成を目指したものでした。どれも現場レベルで「試行錯誤」したうえに得られた、洗練された成果であることが高く評価されました。

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> 応募総数と審査方法
> 全応募はこちら[.pdf 150KB]
> 一次審査を通過した取り組みについて


大賞

生息環境を再現した展示施設が引き出したユーラシアカワウソの哺育行動
(環境水族館アクアマリンふくしま)


【審査委員コメント】
 ユーラシアカワウソの生息環境の主たる要素を再現して、2015年に新しい施設がオープンしました。動物たちが暮らす豊かな環境要素を、陸上はもちろん、水中にも取り入れ、年間を通じて水草が茂り、魚の群れが泳ぐ飼育環境は、国内初の事例となりました。さらに、巣箱を複数追加するなどの工夫を重ねることで、隔絶性の高い巣での出産や気象条件による巣の移動など、野生本来の行動の発現に成功しました。こうした工夫は、すべて野生での情報や海外の動物園資料などを参考におこなわれており、繁殖計画においてもヨーロッパ動物園水族館協会(EAZA)と連携して取り組まれています。水中の魚はときどき生餌となりながらも、死亡率の過度な上昇もなく、水草や自然石のある豊かな環境で暮らし、繁殖して世代交代しながら維持されているのも評価できます。
 近年、カワウソのかわいい顔や姿、しぐさが飼育施設やマスコミで取り上げられ、ペット用の密輸などが問題になっています。本施設には、カワウソのペット化を助長してしまうような展示要素がなく、あくまで野生動物であるカワウソ本来の姿を伝えることで魅力的な施設となっています。野生環境の再現と動物の自然な行動を引き出した「王道のエンリッチメント」であることが高く評価されました。

環境水族館アクアマリンふくしま
https://www.aquamarine.or.jp/
〒971-8101福島県いわき市小名浜辰巳町50
TEL:0246-73-2525

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奨励賞

小さなエンリッチメントを伝えて大きな力に
(池田動物園)


【審査委員コメント】
 全国ニュースでもたびたび取り上げられるような厳しい運営体制の中、現場の飼育スタッフらによる「安価な材料」を使った「創意工夫」の全園的な取り組みにより、飼育動物の欲求行動や認知機能を引き出し、福祉向上に寄与している点が高く評価されました。
 池田動物園は私立の歴史ある動物園ですが、色々な課題を抱えていることが業界内でも知られています。園内は昔ながらの檻飼育がほとんどであり、改修などの将来計画がない中、最低限のレベルで動物たちが維持されています。そうした施設の現状を克服するために、様々な給餌の工夫、遊具の導入、ハズバンダリートレーニングなどが取り入れられています。ペットボトルで給餌器を作る、切り取った木の枝をブランコのように設置するなどのエンリッチメントは、従来の手法であり、新規性や美的観点には欠けるかもしれません。しかし、現場レベルで努力し、試行錯誤を繰り返してエンリッチメントを実施し、動物の健康と福祉改善を目指しているところが評価されました。また、こうした環境エンリッチメントを積極的に実施することで、入園者との対話の機会を生み、市民からの理解と物品や資金の寄付といったサポートを受けていることも評価されました。
 今後も人気動物や大型動物の導入などに頼ることなく、さまざまな点で改善を加えていきながらも、すでに飼育されている動物たちの幸せを第一に考えた動物園であることを期待します。

池田動物園
http://www.urban.ne.jp/home/ikedazoo/
〒700-0015岡山県岡山市北区京山2-5-1
TEL:086-252-2131

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グッドアイディア賞

チュウサギのための水流給餌水槽
(飯田市立動物園)


【審査委員コメント】
 水流を用いて餌を動かすという簡単な原理を使うことにより、待ち伏せ行動などといったチュウサギ特有の採食行動を最大限に引き出し、採食エンリッチメントとして高い効果が得られていることが評価されました。
 エンリッチメントの対象となったチュウサギは、バードホールで他の鳥類と一緒に飼育されており、解凍した魚をバットの上に置く通常の給餌方法では、野生のように待ち伏せして嘴で素早く捕まえるという採食欲求行動を発現することができませんでした。飼育担当者は、卒業研究で野生のサギの行動観察をおこなった経験と知識を生かし、小型水槽の中に波板やポンプ、タイマーを設置して、餌が不規則なタイミング、不規則な動きで水面に浮かび上がる構造を作りました。水槽の大きさ・高さ、止まる部分の幅などを工夫することにより、チュウサギのみが使用できる給餌装置となっています。これは方法として非常によく考えられているうえ、人手を最小限にしつつ、不定期な給餌を実現する仕組みが素晴らしいアイディアです。チュウサギにおいては、活動時間や求愛行動が増え、肉付きが良くなったなどの効果がみられ、魅力を引き出す展示にもなっています。エンリッチメントは動物の福祉向上のためのものですが、野生での行動を引き出すことにより来園者にとってもより興味深く教育効果のポテンシャルが増すという副次効果が認められています。
 給餌装置のアイディアは出尽くしたと思われていましたが、水がないところに水槽を持ち込み、水流を使って給餌装置と見立てるのは斬新なアイディアであり、新しい手法だと評価します。現状では飼育職員が少なく細かな行動観察をする余裕がないとのことですが、将来的には効果測定を実施して、この新しいアイディアが確実に「有効である」と証明されることを期待します。

飯田市立動物園
http://iidazoo.jp/
〒395-0046長野県飯田市扇町33
TEL:0265-22-0416

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 市民ZOOネットワークでは、環境エンリッチメントの試みを、市民が理解し、評価し、応援する社会づくりを目指し、今後もエンリッチメント大賞を継続していきたいと思っています。

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