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エンリッチメント大賞 2019 各審査委員からの全体総評

岩田 惠理
今回の応募はみなレベルが高く、何年か前であったら受賞していてもおかしくないものばかりでした。実際に受賞した取り組みを見ていただくとわかるように、環境エンリッチメントと言っても様々なアプローチの方法があり、それらに順列をつけることはほとんど不可能で、審査することの難しさを改めて感じた今回の審査会でした。一見すると審査基準がぶれぶれのようにも見えますが、飼育動物の福祉の向上が客観的に評価できる取り組みを選んだつもりです。

川端 裕人
今年の6月、第14回国際環境エンリッチメント会議(ICEE)が京都にて開催されました。もちろん日本でははじめて、アジアでも2回めです。環境エンリッチメントが、動物園・水族館、そして、研究者の関心事になって、かれこれ28年(開催は2年毎)ということに、感慨を覚えました。日本では少し遅れて、21世紀になってから徐々に浸透し、今日に至ります。そんな記念すべき年に、エンリッチメント大賞にノミネートされた園館の取り組みは、目をみはるものがありました。改善すべき飼育上の課題を特定し、それに対する解決策を考え、実際に試み、評価する、というサイクルへの意識は、動物福祉についての科学的な理解につながるもので、心強く感じます。

幸島 司郎
今回の審査ほど選定が難しいと感じたことはありません。エンリッチメント大賞も回を重ね、環境エンリッチメントの考えが社会に浸透してきたために、レベルの高い応募が増えて、内容も多様化したからだと思います。私の基本的な選定基準は非常にシンプルで、「自分が動物だったら、どのエンリッチメントが一番嬉しいか?」ということです。その基準からすると、長年の努力で、トナカイ達に自由に草を食べたり池で泳いだりできる環境を整備した、秋田市大森山動物園の試みが総合評価賞にふさわしいと考えました。また、駆除された野生動物を動物園のご馳走に利用する大牟田市動物園の試みや、科学的調査に基づいた東京都葛西臨海水族園の試み、ニオイによるエンリッチメントにチャレンジした飯田市立動物園の試みなど、いずれもエンリッチメントの未来を感じさせる素晴らしい活動を選定できたと思っています。

佐藤 衆介
動物の飼育において、エンリッチメントの重要性が広く認識されてきたことを強く感じる。従って今後期待されるのは、エンリッチメント資材の多様化と目的の達成度評価と言うことになる。前者に関しては、飯田市立動物園のニオイによるエンリッチメントはその1つの例と言える。後者に関しては、エンリッチメントの目的は、①動物福祉改善、②展示改善、③個体の野生復帰にあることから、それらの達成度評価と言うこととなる。①に関しては、動物福祉とは身体的・心理的状態であることから、その改善効果を明確にする必要がある。しかも、これまでのネガティブな状態からニュートラルに戻すという発想から、ニュートラルからポジティブな状態にさらに高めるという発想への転換が必要となってきている。その点からして、大牟田市動物園の「駆除された動物を動物園のご馳走に」に新たな息吹を感じる。

本田 公夫
審査委員を仰せつかって3年目となりますが、年を追うごとに「エンリッチメント大賞」というひとつの賞で全てをくくることの難しさが際立ってくると感じます。エンリッチメントの本義に照らして動物個体の福祉向上にどれだけ寄与しているかが見える取り組みに絞っていますが、今年の森きららのようにエンリッチメントをどのように園全体のシステムに取り組んでいくかというような重要な応募も毎年見られますし、大牟田やモンキーセンターの応募のようにエンリッチメントについて一般社会に強い発信力を持つ取り組みも波及効果という点で間接的ではありますが動物福祉向上への寄与を評価したいという思いに悩みました。これからのエンリッチメント大賞についての議論の必要性を改めて強く認識しました。

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