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動物たちの豊かな暮らし

エンリッチメント大賞 2022 一次審査を通過した取り組みについて

今回受賞した3件のほか、以下の8件が一次審査を通過しました。
埼玉県こども動物自然公園、神戸どうぶつ王国、宮崎市フェニックス自然動物園:生息地である奄美大島と連携したアマミトゲネズミの生息域外保全
   国内希少野生動植物種であるアマミトゲネズミにとって最適な飼育環境を実現すべくさまざまな工夫を凝らした結果、繁殖に成功し、また生息地である奄美大島への啓蒙普及に貢献していることが高く評価されました。日本固有種の保全のために動物園が実践すべき模範的な生息域外保全の事例といえるでしょう。保全を目的とした啓蒙普及活動や飼育下繁殖のためのさまざまな工夫は、エンリッチメント大賞の評価軸からははずれてしまいましたが、今後の事業の継続とさらなる発展を期待します。環境エンリッチメントの要素が具体的にどのように保全に貢献しているのかが明確に示されれば、保全対象である動物の福祉向上という視点からも、さらに意義深い取り組みになると思われます。
東京動物園ボランティアーズ・ドーセントグループ:動物と市民の架け橋となることで間接的に動物の暮らしを豊かにする
   長い歴史と実績のある動物園ボランティア組織ということで、第1回目となる「正田賞」の有力候補として議論されました。都立3つの動物園と連携して、動物に対する知識や考え方を広く市民へ普及してきた実績は評価に値します。一方で、ガイド内容は個人の裁量に任されており、動物福祉やエンリッチメントといった普及テーマについての組織内での方針が不明瞭である点などが、エンリッチメント大賞という枠のなかでの評価の限界となってしまいました。今後、さらに東京都や各園との連携を深め、動物福祉の向上や普及に貢献することが活動の目的のひとつとして明確に位置付けられることを期待します。
千葉市動物公園:「アカデミア・アニマリウム」園主体の調査研究の取り組み
   動物園のもつ「研究の場」としての役割を高め、そのなかで飼育担当者が主体的に研究に参加することで、飼育動物の現状を把握し、福祉向上に取り組みやすい環境が醸成されています。一部の動物については、エンリッチメントの実施前後の科学的評価により福祉向上が確認されました。このような職務環境のなかでエンリッチメントを主体とした研究事例がさらに増え、福祉向上に寄与していくことを期待します。
公益財団法人日本モンキーセンター:バックヤード改善計画
   福祉が後回しにされがちなバックヤード(非展示施設)の飼育個体にスポットを当て、その状況を積極的に情報発信しています。またクラウドファンディングがうまく活用されているのは、多くの市民の合意形成を得ている証であり、資金不足により動物福祉の実現が困難な他園の模範事例となるでしょう。本取り組みを皮切りに、S.P.I.D.E.R.モデルを回しながら、まだ従来のままの良好とはいえない飼育環境にある個体の福祉改善も実現していかれることを期待します。
名古屋市東山動物園:マシマシチンパンジー
   チンパンジーの毛抜きという問題行動の改善に端を発する取り組みです。展示場内にあらゆる変化を加え続け、さらに個体の関係性を考えながら穏やかに暮らせるよう日々のサイクルづくりをおこなっています。目標設定や計画が明確であり、数多くの工夫は圧巻で熱意が感じられます。成果がより明確になって表れれば、さらに高い評価となるでしょう。今後、園や班全体で目標や手段を共有し、組織的な取り組みとして発展・継続していくことが望まれます。
世界淡水魚園水族館 アクア・トト ぎふ:動物福祉に配慮した大型魚類の全長推定方法
   捕獲によって負担がかからないよう、メコンオオナマズをはじめとした大型魚類の新しい体長測定方法の確立を目指しています。大型魚類にストレスをかけずに体のサイズを計測することで成長の様子をデータ化し、心身の健康状態の評価指標としようとする試みは大変興味深い取り組みです。今後この技術を使って得たデータを利用して、どのように福祉向上の実践と評価につなげていくのかが期待されます。
わんぱーくこうちアニマルランド:クロシロエリマキキツネザルの闘争緩和作戦
   制約の多い古い施設で社会性の高い動物を多頭飼育することから生じる問題において、1個体1個体に目を配り、S.P.I.D.E.R.モデルをはっきりと意識しながら環境改善に取り組んでいる点が評価されました。アドリブサンプリングの手法を活用して、飼育担当者が作業中に個体の鳴き声をカウントする方法で効率よくデータを記録し、分析できています。問題解決のための基本的な手順がきちんと実践されているという点で推奨すべき取り組みです。 現場での環境改善への努力をサポートできるよう、園が本種の国内個体群についてほかの園館との連携や調整に基づく自園の役割と中長期的な飼育管理方針を明確にすることで、エンリッチメントの取り組みとしてもより有意義なものになると考えます。
到津の森公園、羽村市動物公園、静岡市立日本平動物園ほか:一般来園者との連携による3Dプリンターでのフィーダー制作
   レッサーパンダのフィーダー作成に一般来園者が協力した取り組みです。協力者の地元である到津の森公園で始まり飼育担当者とともに改良を重ねたフィーダーは、羽村市動物公園や静岡市立日本平動物園をはじめとする各地のレッサーパンダ飼育園館にも寄贈され、活用されています。特定の技術を持つ外部の協力者と連携し、全国への広がりをみせるこの取り組みは、エンリッチメントへの市民参加という点で今後も注目していきたい案件です。フィーダーを使用する園館の連携により、安全性や活用法などの情報を共有することで、より動物福祉に貢献する展開が期待できるでしょう。
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