« はじめにのはじめに | メイン | 世界一のドリームナイト?! »

ヨーロッパで魚に出会う

動物園にいきなり興味を持ってから4年後、私はヨーロッパの動物園をめぐる旅に出ていました。動物園に限りない可能性を感じたものの、まだ経験も知識もなかった私は動物園の熱意あるスタッフとお話をしても、あちこちの動物園でボランティアをやっても、具体的に何ができるのかがみえてこなかったからです。

神奈川県から助成を受けてのかなり自由な旅は10ヶ月続き、ヨーロッパ12カ国およそ80の動物園に次々と訪れました。動物園ボランティアと一緒に活動したり、教育活動を見学したり、その合間には、しっかりジャージー動物園のサマースクールや欧州動物園教育担当者会議に参加し、一気に100名を超える動物園スタッフと知り合いになりました。そして、私はとってもすてきな出会いを果たすことになるのです。

動物園に行って「教育活動を見学したい」と言うと、決まって遠足団体向けのプログラムを紹介されます。実は、動物園の教育セッションを見学していくにつれ、私は物足りなさを感じていました。ヨーロッパのエデュケーターは、毎日毎日、大挙して訪れる子どもたちを相手に、室内で、時に小動物を用いて授業をするのに大忙し。ドイツでは学校の先生が動物園に派遣され、子どもたちは、後ほど動物園に繰り出すことを楽しみに、お勉強をしにやってきていました。突然、動物園を訪問する私が、いつも特別なプログラムを見学できるわけでもなく、これはしょうがないことなのでしたが、それにしても、その内容は国境を越えてもあまり変わらないものでした。動物園の教育に関しては、国際会議も、地域会議も充実しているため、情報がかなり共有されていたからなのです。

そんな中、私はスイスですてきなエデュケーターに出会います。この日、見学を約束していたベルン動物園は、スイスの首都に位置しながらも、動物園はひっそりと、森の中にありました。バスを降り、ヨーロッパの樹高の高い森の中をてくてく歩いていくと、突然フラミンゴに迎えられます。まだ動物園に入る前の思いがけない出会いにびっくり。この「出会い」こそ、この日のキーワードになりました。

ベルン動物園のエデュケーターのマーリーは、「魚」のプログラムを実施するとのこと。彼女は集まってきた小学生に「一列に並び、前の人の肩を持って、両目を閉じて」と指示します。そして、マーリーを先頭に、ゆっくりドキドキ歩いていきます。そして、子どもたちに手を離すように言ってマーリーが子どもたちの向きを少しずつずらせて目を開けさせると、子どもたち全員から歓声が上がります。子どもたちは、園内の水槽の前に連れてこられていました。3人並ぶともういっぱいの小さな水槽もあります。でも、海の中にいるような、そんな気持ちで目の前の魚をじっと見つめているようでした。しばらくの間、だれも何も喋りませんでした。

子どもたちがプログラムを終えて帰ると、すかさず私は「ヨーロッパで一番すてきなプログラムだった!」と話しました。マーリーは相当びっくりしていましたが、小さな市営の動物園のベルンは、ヨーロッパ地域の会議でさえあまり行けないようで、他の動物園のプログラムをそんなには知らないようでした。そして、すてきだと話した私自身も、そのすてきの要素を、この時点ではあまりわかっていませんでした。ただ、子どもたちのきらきらした目とその後の集中力を目の当たりにし、ずっと心から離れませんでした。そして、後々私はズーラシアでアマゾンの動物と出会う旅を企画することになるのです。

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.zoo-net.org/mt/mt-tb.cgi/3

コメントを投稿

(いままで、ここでコメントしたことがないときは、コメントを表示する前にこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまではコメントは表示されません。そのときはしばらく待ってください。)