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段ボールのクルーザーでアマゾン6400kmの旅へ

やっと夏のイベントが落ち着いたと思ったら、もう10月。実は心残りの企画があります。今年もなんとか機会を見つけて実施しようと目論んでいた「アマゾンクルーズ」は、2003年から毎年真夏に実施していた企画なのですが、今年は残念ながらスケジュールが合わず、実施ができないまま、夏が終わってしまいました。

「アマゾンクルーズ」は、私がズーラシアに入ってから初めて一から自分で企画した思い出深いプログラムです。当時、アマゾンの動物を担当していた私のまわりにうまいこと役者の揃っていた2003年夏、今がチャンスと私はアマゾン川を旅する台本を書きました。ズーラシアで初めての寸劇ワークショップに戸惑う飼育係たち。でも、やっぱりみんなは役者なのでした!

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「アマゾンクルーズ」は、アマゾンの動物たちの展示場裏側にまっすぐ通っている管理用の道路をアマゾン川に見立て、途中で先住民の方々やアマゾンの動物たちと出会いながらアンデスまで旅をするおよそ40分のプログラムです。「アマゾン」と言っても、そこは園内とは違い、管理用の殺風景な道路。クルーザーは段ボール製。「生息環境展示」をうたうズーラシアの対局にあるこの企画では、参加者の豊かな創造力が命なのでした。

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参加者は、当日募集した一般来園者の方20名。ズーラシアのスタッフは、「普通の探検家」「伝説のシャーマン(呪術師)」「勇敢な狩人」「酋長の娘」「さすらいの笛吹き」と言った具合にそれぞれの役に分かれます。

旅に出る前に、シャーマンが旅の心得を参加者にお話しします。まず、動物たちはアマゾンの人々にとって貴重な食料であると同時に、神聖な存在であり、むやみに驚かしてはいけないということ。そして、旅の途中でそこにくらしている先住民と出会ったら、「チャイ(アマゾンのある地方で使用されている挨拶の言葉)」と挨拶し、心を通わせようと試みること。準備ができたら、参加者は好きなクルーザーを選び、探検家の指導のもと、運転の仕方を練習します。

ヤカワ族2.jpg

そして、狩人、酋長の娘、笛吹きといった先住民の方々と出会っていきます。出会うたび、「チャイ!」と挨拶し、まずは先住民のお話に耳を傾けます。そして打ち解けたところで、そこにくらす動物たちをそっと見せてもらいます。途中には、ピラニアがいたり、アンデスの険しい山道があったり。

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この、たった40分の旅の中で、次々と出会う先住民とのコミュニケーションやそこで出会える動物たち。参加者はどんどん楽しくなっていきます。でも、旅の最後には、先住民のみんなの本音が漏れます。
「最近はなかなか獲物がとれなくなった」「アンデスも気温が上がってきた」「シャーマンの後継者がいない」
すっかり旅を楽しんだ参加者のみなさんは、これらの言葉に真剣に耳を傾けてくれるのです。

最後のお話.jpg

もちろん、先住民の方々の声は私たちが代弁できるような単純なものではありません。でも、私たちが伝えたいある側面を切り取ることで、参加者の方々にはそれぞれの立場でいろいろなことが起きているという事実を認識してもらえたようでした。そして何より、毎日動物たちと関わっている飼育係だからこそ、動物と関わる姿勢を伝えられたんだと思います。先住民とお話しした後で展示場の後ろ側から動物に会いにいく時、誰もがそっと近づき、一つ一つの出会いを大切にしてくれていました。

旅のおしまいには、自然と拍手が起こります。私たちのつたない寸劇への、応援の拍手。「動物たちに出会わせてくれてありがとう」というお礼にも聞こえます。そして、私たち自身も同じ気持ちなのでした。

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