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2006年06月20日

ゴミからすてきなキャンドルナイト

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2006年の夏至の日、6月21日夜、8時から10時の2時間、
みんなでいっせいにでんきを消しましょう。


こう呼びかけているのは、100万人のキャンドルナイト。スローを楽しむムーブメントです。ズーラシアではこれに賛同し、動物園のゴミからキャンドルケースをつくるワークショップを開催しました。今日中にこの記事を投稿したら、ぎりぎり夏至に間に合います!ということで、またもやズーラシア近況イベント報告をさせていただきます。

ズーラシアでは、6月17日〜18日の二日間、キャンドルケースづくりを開催しました。このキャンドルケース、なんとズーラシアのゴミからつくるんです。

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用意したのは、ミルワームのパックと牛乳パック。ミルワームとは虫の幼虫で、動物園ではサルや鳥が食べており、プラスチックのパックにおがくずとともに入って納品されます。牛乳は毎日オランウータンが飲んでいます。これらのゴミを一ヶ月ほど前から、飼育担当者に協力してもらってせっせと集めました。

ワークショップは、このミルワームのパックや牛乳パックに絵を描くだけと言うとても簡単なものです。ケースはお持ち帰りしてもらいます。このケースに水を入れてキャンドルを浮かべ火を灯すと、ステンドグラスのように描いた絵が床にきれいに広がるのです。たったこれだけのことなのに、キャンドルを囲むと、なぜかやさしい気持ちになれます。

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ワークショップの参加者には、手づくりキャンドルをプレゼントしました。このキャンドルもなんと、動物園のゴミから作りました。材料は、ズーラシアのレストランで使用済みの調理油。この油に凝固剤を入れ、アロマオイル(動物の治療にも使っているものです)で香り付けし、クレヨンを削って溶かすと、色とりどりのキャンドルになるのです。キャンドルの型にはキウイが納品されてくる時に入ってくる緑色のプラスチックケースを利用しました。これで、キウイを縦半分に割った大きさのちょっといびつでカラフルなキャンドルが大量にできます。

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ワークショップには二日間あわせて100名の方々が参加してくださいました。そしてみなさん、動物園のゴミからつくったキャンドルとキャンドルケースを大切そうに持って帰ってくださいました。明日が夏至の夜。ズーラシアで作ったキャンドルたちが、いろんな場所ですてきな時間を過ごすんだろうなぁと思うと、うれしくなるのでした。

このキャンドルナイトは、ほんの2時間、電気を消そうと呼びかけているだけです。そして、動物園で出るゴミというのも、そもそも、もっと削減できるはずのものなのです。でも、私自身、ゴミを集め、キャンドルを作り、準備をしながら、モノを循環させていくのは手間がかかるけど、楽しいことだと思いました。そして、つくったキャンドルに火を灯し、ズーラシアのスタッフとひそひそ話を楽しみながら、時には電気を消すのもいいものだと思いました。ろうそくの炎は少し喋るだけでもゆらゆらとゆれ、そのゆれで床に移っている模様もゆらゆらゆれます。キャンドルを囲むだけで、楽しくて優しい気持ちになれることを実感。こういう積み重ねで、価値観を変えていくんだろうと思います。参加者のみなさんには、天ぷら油キャンドルの作り方、キャンドルナイトの楽しみ方を描いたチラシを渡しました。実際にキャンドルをつくってもらえたら、私が感じたように、ますますスローを楽しんでもらえるのではないかと思います。

みなさんもぜひ、明日はスローな夜を楽しみましょう。

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2006年06月10日

一年で一番ズーラシアが思いやりであふれる日

今回は、前回の投稿で予告した、dreamnight at the zooについて、詳しい報告をしたいと思います。dreamnightにあたっては、3ヶ月かけて準備し、ズーラシアスタッフはもちろん、ズーラシアサポーターズをはじめとする数多くのボランティアさんとともに実施したのです。実はこのdreamnightに関して、ズーラシアからボランティアを公募してはいなかったにも関わらず、近隣の高校生、企業の方々、アートNPOより30名もの方々がdreamnightに参加したいと言ってくださり、なんと、総勢150名でdreamnightに取り組むことになったのです。

全体を取りまとめていた私にとって、参加される方々はもちろん、実施する側のスタッフにとっても、心動かされるすばらしい企画にしなくては!という、本当に大きな挑戦でした。

6月2日金曜日の閉園したズーラシアに続々と車が集まってきます。ボランティアさんもすでに会議室に集合し、横浜市リハビリテーション事業団のスタッフの方による、障害のある子どもたちとのコミュニケーションについてのレクチャーを受けてから、園内の各イベントブースでズーラシアスタッフと対面後、現場実習。午後5時には受付が始まり、招待されたご家族のみなさんが園内へと案内されます。わくわくした空気の中、お父さんが子どもたちをからかったり、お母さんが家族をせかしたり。子どもたちが大きなバギーに乗っていたりするだけで、普段と変わりない光景が繰り広げられていきます。

入園してすぐの原っぱで、まずはフェイスペインティング。動物型シールを頬に貼り、アレルギーフリーの絵の具を塗ります。ウサギやカンガルー模様の笑顔の子どもたちは、着ぐるみのオカピやゴールデンターキンと遊びながら、今度はころこロッジ方面へと向かいます。ここでは、dreamnightに賛同してくださった企業から提供されたジュースやポップコーンが参加者の方へと手渡されます。屋内休憩施設であるころこロッジの中では、アートNPOによるおんがくパーティーワークショップを開催。子どもたちは、リンゴのパックを踏んだり、キウイのパックやエサのバケツを竹のバチで叩いたり、動物園のゴミを使った演奏会で大はしゃぎ!ころこロッジの外側では、ポニーのシンスケくんユウスケくんがお出迎えしてくれ、ほとんどすべてのご家族がここで記念撮影をしていきます。

園内はおよそ1/3のエリアが解放され、アマゾンとアフリカの動物たちに会うことができます。すべての展示場で飼育係がスペシャルガイドを実施。もちろん、オカピもゆっくりじっくり見ることができるのです。動物展示の合間には、たくさんのハンズオンが次から次へと現れます。動物鳴き声クイズに挑戦したら、その隣でオオアリクイの赤ちゃんパペットを背負ってオオアリクイのお母さん体験。オオアリクイの等身大模型を用いたガイドでは、60cmもある舌を引っ張って驚いたり。ズーラシアサポーターズによる動物スタンプコレクションで全スタンプ制覇したら、ヤマアラシの針を触って、うんちワールドでにおいを嗅いで、ゾウのエサの量と自分の体重を比べて・・・

これらのイベントは、五感を駆使して体験できるものを考慮し、準備しました。もちろん、障害のある子どもたちもできるだけイベントに参加できるように思いもありますが、それと同じくらい、一緒に来園している家族のみなさんにも心から楽しんでもらいたいと思い、企画をしています。実際、自閉症の子どもにとっては、興味の対象が合わず、私たちが用意したイベント自体を楽しんでもらえない可能性も大きいのです。それでも、いっしょにいる家族が楽しそうにしていると、その気持ちは伝わります。また、家族の方々にとっても、このような気兼ねのない環境で楽しめる場所というのは、まだまだ少ないようなのです。

子どもたちが大きな声で叫ぼうが、突然走り出そうが、誰も冷たい視線を向けません。家族の方々が安心感に包まれ、お母さんもいつもよりゆっくりと動物園を楽しんでいるようです。この日は一年間で一番、ズーラシアが思いやりであふれる日となります。参加者の方々同士でお互いを気遣い、道を譲ったり、困っている家族に手を差し伸べたり、というのが日常なのです。私たちスタッフも、家族のみんなで動物園を楽しめるよう配慮して、元気よくコミュニケーションをとっていきます。

夜7時近くにはすっかり夜の雰囲気となり、園内各所の照明が点灯され、看板も光りはじめます。特別感がアップすると同時に、実は、日光に当たることのできない障害のある子どもたちにとっては、初めての動物園になるのです。そして、8時にはdreamnightもおしまい。参加者のみなさんを見送った後、ズーラシアにはなんだか、あたたかな空気が残るのでした。

dreamnightから一週間。この間に、参加されたみなさまからのアンケートが続々とズーラシアに届いています。そのすべてに、スタッフのあたたかい対応への感謝が綴られています。でも、実は、あたたかい気持ちにさせてくれているのは、参加者のみなさまなのです。もちろん、反省すべき点も数多くあります。それでも、「こんなにやりがいのある企画はないのです!」と熱弁していたオランダのHankに共感し、そして、私もHankのように、dreamnightのすばらしさを、日本で呼びかけたいと思います。

スタッフ、ボランティア、参加者のすべてのアンケートを集計して、報告書にします。ご希望の方はどうぞご連絡下さい。

2006年06月03日

世界一のドリームナイト?!

*6/4に若干加筆修正しました
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今日は、私がズーラシアで企画したアートな挑戦的話をはじめようと思っていたのですが、、、
ここ最近の超多忙生活のため、今回はちょっと予定を変更して、近況報告をひとつ。(これからも時々、おもしろい話があるときは脱線するかも?)

実は昨日、ズーラシアでは、dreamnight at the Zooという国際的なイベントが開催されました。6月2日の夜、世界26ヶ国の100近い動物園で、障害のある子どもたちとその家族に気兼ねなくたのしいひとときを過ごしてもらえるよう動物園に招待されていたのです。しかもズーラシアは時差の関係で、世界で一番早くdreamnightが始まったらしい!

dreamnight at the Zooは、オランダのロッテルダム動物園が1996年に始めた、障害のある子どもたちとその家族を閉園後の動物園に招待し、気兼ねなくすてきな夕べを過ごしてもらおうと言うイベントです。ヨーロッパでは、夏至の時期には夜9時くらいまで明るいことも手伝ってか、多くの動物園がdreamnight at the Zooに賛同しています。アジア地域では、台北動物園とズーラシアの2園がエントリーしているだけなので、まだまだ認知度は低く、初めて聞かれた方も多いと思います。

とは言え、オランダのdreamnight事務局の方々は、様々な国際会議で精力的にこの意義を紹介しています。実は私も、3年前にオランダで開催されたinternational congress of zoo keepers(世界動物園飼育担当者会議)でこの企画を初めて知り、事務局のHankに「ぜひ日本でも実現したいと思います!」と宣言し、たくさんの方々の協力のもと、昨年からやっと実施にこぎつけたのでした。

こんなに毎日、子どもたちで溢れている動物園も、重度の障害のある子どもたちとその家族にとっては、逆に行きにくい場所となってしまっている場合もあります。ズーラシアのように動物が遠く、認識しにくい動物園ではなおさらです。しかし、動物園というのは、動物に出会うばかりでなく、動物との出会いを通して、多様な人が関われる場所だと思うのです。毎年100万人近い来園者のあるズーラシアは、社会を映す鏡でもあるのだと思いますし、十分に社会を変えていく力を持っているはずなのです。

この、dreamnightへの参加にあたっては、大きく二つの思いがあります。一つは、誰もが利用できる、市民の財産としての動物園の意義を果たしたいと言うローカルな視点、もう一つは、国際的に展開している動物園の利用者に対する企画としては唯一とも言えるこのdreamnightを、ともに盛り上げていきたいと言うグローバルな視点です。

そもそも、障害のある子どもたちとその家族だけを招待するという点で、すでに障害のある方を区別してしまっているという側面がこの企画にはあります。しかし、私が日々動物園で感じる社会というのは、やはりまだまだ十分お互いを思いやれると言い切れるものではないと感じています。通常の入園で、障害のある方とそうでない方が、動物園側の配慮なしにはお互いが気兼ねなく、たのしい時間を過ごすということが難しいのではないかと、残念ですが思います。

ズーラシアではこれまで、地域の養護学校や療育センターと協力をして、障害児の遠足を企画してきました。この中で、元気いっぱいなお母さん、そして、楽しそうにしているお母さんから元気をもらっている子どもたちに出会ってきました。子どもたちが楽しそうにすると、お母さんはますますパワ−アップ!いつも動物園側のスタッフの方がたくさんの元気をもらっていました。もっとたくさんのすてきな笑顔に出会いたい!そして、この笑顔こそがよりよい動物園となる源となるのだと思います。

今回のdreamnightでは1000人以上の方々を招待し、そのうちの7割くらいの方々が実際に来園されました。参加された方々にたのしい時間を過ごしていただけていればと願うばかり。ズーラシアのバリアフリーはまだはじまったばかり。でも、誠意を持って取り組み、まず私たち自身が成長し、関わるみなさまとよりよい社会をつくっていけるよう、がんばりたいと思います。

気がつけば、dreamnightの実施企画について一言も触れないうちにこんなに長文になってしまった・・・。詳しい報告は、次回ということで。