Overview

総評

“エンリッチメント大賞2004”が決定しました!!

みごと受賞となったのは以下の皆様です。おめでとうございます!

第3回目となった今年は全国から過去最高となる83件の応募がありました。

応募内容、方法ともに非常にユニークなものが多く、審査も非常に難航しましたが、最終的に以下の施設(担当者)が選ばれました。その中で見事部門別大賞を勝ち取った4件、そして特別賞2件を表彰いたします。

Winners

受賞した取り組み

飼育担当者部門 大賞

旭川市旭山動物園北海道

木榑 隆介 さん

ニホンザルに対して、手作りの様々な工夫によって採食の方法を考え、食事時間の延長を実現させ、さらに行動の多様性を引き出して、その行動を来園者に見せ、楽しませていることが高く評価されました。特にガラスや壁にハチミツやごはんつぶを塗りつけて採食させる取り組みと抜け毛防止のためのふりかけフィーダーのユニークさに関心が集まりました。

所在地
〒078-8205 北海道旭川市東旭川町倉沼
TEL
0166-36-1104
Winner's Voice

受賞の声 ―

さる山 旭山動物園/北海道

以前、放飼場に餌を隠していた時です。ある親子が私に「わざわざ餌を隠すなんてサルに意地悪しているみたいでかわいそう」と話しかけてきました。私はすかさず、「これは意地悪ではありません。サルは努力して餌を探し出し、その結果、食べることができるのです。山菜取りと同じで、うちのサルは餌を発見した喜びを知っていますから、幸せだと思います。」と自信満々に返答しました。しかし本当に幸せなのか?快適に暮らしているか?・・・実際はサルに聞かなければわかりません。

今回、素晴らしい賞を頂きましたが、これに満足せず、今後もサルが快適に暮らせると同時に、いきいきとした姿を展示できるように励みたいと思います。この度はありがとうございました。

旭川市旭山動物園 木榑 隆介

飼育施設部門 大賞

大阪市天王寺動物園大阪府

アジアの熱帯雨林ゾーンのゾウ舎

2004年完成した新しい施設であり、これまでの国内の飼育展示施設とは一線を画する完成度の高さが選考のポイントになりました。水辺への自由なアクセスなど、飼育動物の特性に配慮した施設となっているだけではなく、生息地であるタイの国立公園を再現した雰囲気や動線、アジアゾウの現状を伝える努力など、環境教育の場としての動物園の可能性を追求していることも大賞決定の理由となりました。

所在地
〒543-0063 大阪府大阪市天王寺区茶臼山町1-108
TEL
06-6771-8401
Winner's Voice

受賞の声 ―

アジアの熱帯雨林ゾーンのゾウ舎 天王寺動物園/大阪府

天王寺動物園は1915年の1月1日に開園し、2005年の元旦でちょうど創立90周年を迎えようとしています。カウントダウンの始まったちょうどこの時期に、大賞受賞のうれしいニュースが届き、天王寺動物園ではスタッフ一同、大いに沸き立っています。といいますのも後述するように、この10年間、私どもは1995年に策定した天王寺動物園の将来計画「天王寺動物園ZOO21計画」を元に、次々と新しい施設を造ってきました。いずれの施設も日本、いや世界に誇れる動物展示施設と自信満々でしたが、完成、一般公開後に思わぬところで、しまった!と思うことがいろいろ出てきました。たとえば柵の高さの位置が車椅子からの視線のちょうど妨げになっているとか、繁忙期には観覧路の幅が狭すぎたとか、せっかく工夫を凝らした説明プレートが入園者の気づかない場所にあったとか・・・そういう失敗を次の動物施設造りには繰り返さないように、少しでも進歩していくようにと、設計を心がけ、建設を行ってきた中で、アジアの熱帯雨林ゾーンの新しいゾウ舎はかなり満足のいく作品に仕上がったと思っていました。それが今回の栄えある大賞に結びつき、まさに90歳、卆寿のお祝いとしてこんなにうれしい受賞はありません。

天王寺動物園は大阪市のまさに中心に位置し、年間 150万人以上もの入園者が訪れる典型的な都市型動物園です。動物施設については、戦前からの施設を1961年から9か年計画で無柵放養式を中心とした系統分類学的な展示動物舎へと改築しましたが、近年、それらの施設の老朽化が進む一方で、自然保護や環境問題への関心が高まる中、動物にも快適で、入園者にも自然に対する認識を深めてもらえる新しい施設作りの検討が求められるようになってきました。1995年、「天王寺動物園ZOO21計画」の基本計画を策定しましたが、この計画の目指すものは次の3点です。

動物園全体に自然を再現し、自然を満喫できる貴重な緑のオアシスとして市民に憩いと潤いを提供する。

動物の生息環境を再現した生態的展示手法により、自然環境等の認識と教育効果を高める。

絶滅に瀕する希少野生動物を保護するとともに繁殖研究を進め、飼育下での保護増殖を図る。

1995年3月に開館した爬虫類生態館はZOO21計画の第一歩をなすもので、動物の生息地を植物や擬岩、擬木で再現し、従来の動物舎とは異なった素晴らしいものであると市民からも高い評価を得ました。97年9月にはカバ舎を完成・公開しましたが、カバの生息地を再現するとともに、日本で初めて水中のカバをガラス越しに観察できる施設として、評判を呼びました。98年10月にはサイ舎を、続いて2000年8月にはキリン、シマウマ、ダチョウなどを展示するアフリカサバンナ区草食動物ゾーンを公開しました。実はこの草食動物ゾーンに引き続き、ライオン、ハイエナを展示する肉食動物ゾーンの建設に入る予定でしたが、ゾウ舎の老朽化が問題となり、それを先行させることになりました。

天王寺動物園のそれまでのゾウ舎は1936年に建設され、建築後60数年経過していることから老朽化が著しく飼育管理上の安全性が危惧されること、それに加え50歳を越えた高齢なゾウの健康福祉なども差し迫った問題になっていました。そこで急遽、新しいゾウ舎の基本計画に続き、99年に基本設計を行い、2000年には実施設計を策定しました。ZOO21計画が始まったときから、動物施設の建設計画、設計には設計コンサルタント、工事担当職員以外に天王寺動物園の飼育担当者や獣医師、植物を管理する職員なども加わったプロジェクトチームを組織し、精力的に議論を重ねました。今回もこのプロジェクトチームを計画段階から立ち上げ、喧々諤々の議論、検討、研究を行いました。また一方ではタイの野生のゾウが生息する野生動物保護区も視察し、現地でのゾウの暮らし方、人との関わり合いなども調査し、設計に供しました。

新ゾウ舎は2001年9月に着工し、03年9月に総事業費13億円で竣工しました。本施設では入園者に感動と安らぎを与える場となるよう、野生の動植物が生息する環境を再現し、人と動物のかかわりを展示する生態的展示の手法を取り入れています。4200の敷地に鉄筋コンクリート造り2階建て、延べ床面積707のゾウ舎と1550の放飼場が設けられています。これは旧ゾウ舎のほぼ倍の規模で、舎内には寝室が4室あり、ゾウの出入り口は遠隔操作可能な電動式の馬栓棒および扉が設置されています。また舎内の暖房用に遠赤外線ヒーターを設けるとともに、放飼場床をコンクリートから土に替え、高齢ゾウの健康管理にも配慮した施設としました。また高齢のために歯がすべて脱落してしまった時に備えて芋類を蒸してやわらかくするための大型蒸し器の設置や、寒い冬でもゾウの足の爪を清潔に保てるように温水式高圧洗浄機を導入するなど、動物の健康福祉にも留意しています。

展示の全体構成は森林ゾーン、林縁部ゾーン、農耕地ゾーンからなり、クスノキ、シュロ等の既存の樹木を積極的に取り込み、スダジイやビロウ等の新植樹木、また擬木や擬岩も配し、タイの熱帯雨林の再現に努めました。また総延長155mの観覧路にはミストの発生装置、滝、ゾウの足跡、塩なめ場、ゾウに踏み潰されたサソリ、キノコが生えたゾウの糞、梢で顔をのぞかせるニシキヘビ等々、好奇心をくすぐるような遊び心一杯の仕掛けを設け、タイの熱帯雨林を入園者に満喫していただける工夫を凝らした施設としています。さらに農耕地ゾーンでは現地のバナナ畑を再現し、ここでは森林を開拓した人々と住処を追われてバナナ畑を襲うゾウとの関わり合いを展示し、環境について考えるきっかけが提供できればと思っています。

動物の展示施設は規格品のような一般の住宅やビルを建てるようなわけにはいかず、常に独創的なアイデアと他施設の調査、研究が求められます。さらに動物を飼育管理する立場、入園者の見る立場、そして快適に暮らせる動物の立場、この3つの立場、条件を考えながら設計をしていかなければなりません。来年の5月から次の新施設アフリカサバンナ区肉食動物ゾーンの建設が始まりますが、天王寺動物園の新しい施設は常に進化しており、この施設には市民の声も取り入れたものとなっています。2006年5月に完成予定ですので、これも大いにご期待ください

大阪市天王寺動植物公園事務所 飼育課長 宮下 実

来園者施設部門 大賞

愛媛県立とべ動物園愛媛県

つらい坂道を楽しくする「足跡」

正門に着く前の長い登り坂に、ステンレスで再現された動物たちの足型が、その動物の歩幅に合わせて配置されています。入園前の歩道から楽しませ、体験させ、期待感を高め、教育する試みは、開園時から来園者に利用されており、国内の他園館に先駆けて設置されたことが評価されました。

所在地
〒791-2117 愛媛県伊予郡砥部町上原町240
TEL
089-962-6000
Winner's Voice

受賞の声 ―

つらい坂道を楽しくする「足跡」 愛媛県立とべ動物園/愛媛県

2004年度エンリッチメント大賞「来園者施設の部門」をいただき誠にありがとうございます。当園は、元々の地形を活用し建設したため、起伏があります。利用者の皆様に、少しでも楽しんでいただくため、様々な工夫をしております。今回受賞の「足跡」も、そのひとつで、9種類ある足跡をたどって行くと駐車場から入口ゲートまでの長い距離も、園内の一部として皆様に楽しんでいただけていると思います。

この受賞を励みに今後も、皆様に親しまれ、愛される動物園になるよう、より一層の努力を続けますので引き続きご支援いただきますようお願い申し上げます。本当にありがとうございました。

愛媛県立とべ動物園 園長 生野 一郎

来園者施設部門 大賞

(財)東京動物園協会東京都

食堂の体験メニュー

来園者に飼育動物の食生活を理解してもらうことのできる試みに注目が集まりました。コンパクトな解説書を付けていることも評価があがった理由のひとつです。審査会では竹やペレットなど、人間が食べられないものをおまけ的に入れても面白いのではないかというアイディアも飛び出しました。他の園館でも是非参考にしてもらいたい取り組みです。

所在地
〒110-0007 東京都台東区上野公園9-83上野動物園内
TEL
03-3828-8235
Winner's Voice

受賞の声 ―

食堂の体験メニュー 東京都動物園協会

このたびは当協会が開発した商品「体験メニュー」がエンリッチメント大賞をいただけるとのこと、大変うれしく思っております。

動物園というとどうしても動物が主役となりますが、それに劣らず重要な役割を担っている売店・食堂で、動物園ならではの、動物園の雰囲気を楽しんでいただける独自商品を来園者に提供したい、ということで、担当者が知恵をしぼり、動物の食事を人間向けにアレンジした商品を開発いたしました。現在は「ゴリラの食事」「パンダだんご」「パンダがゆ」の3種類を発売していますが、おかげさまで各方面で取り上げられて話題となり、人間の「エンリッチメント効果」もあったのではないかと考えています。

これからも、動物園の特色をいかした、来園者に喜ばれる商品の開発に努めてまいります。ご支援下さいますよう、よろしくお願いいたします。

財団法人東京動物園協会 理事長 菅谷 博

特別賞

旭川市旭山動物園北海道

あざらし館

2004年の動物園ブームを招くきっかけとなったこの施設は「特別賞」として表彰することになりました。アザラシの縦の動きを見せるというこれまでにない発想によってオリジナリティに溢れた施設となっているだけでなく、アザラシが自由に選択をして行動ができる施設であることも重要な評価ポイントになりました。

所在地
〒078-8205 北海道旭川市東旭川町倉沼
TEL
0166-36-1104
Winner's Voice

受賞の声 ―

あざらし館 旭川市旭山動物園 /北海道

大変すばらしい賞をいただき感激しています。ありがとうございました。

動物園の飼育施設はそこで飼育される動物が一生を過ごす世界でありすみかです。僕たちはこの閉鎖環境の中で彼らが持っている運動能力や,習性をできるだけ自然に発揮できるようにしてあげなければいけないと思います。動物園は「見てもらうため」の施設です。僕は来園者は動物にとってストレスではないと考えています。目線の関係やアングルを工夫することで動物にとって好奇心や暇つぶしの対象になると思います。もしそうではないと考えるなら動物が来園者を避けるシェルターを作るのではなく来園者がストレスにならないような工夫をすることが大切なのではないでしょうか。

今後も,動物たちの素晴らしさを尊さを一人でも多くの方に感じてもらえるように頑張ります。大きな励みになりました。来年もいただきますヨ!

動物園コミュニティ賞

旭川市旭山動物園北海道

赤パネル・青パネル

国内外の動物園水族館でこれまでタブー視されていた個体の「死」をも見せる試みです。これは、「生」を表現する場であった動物園のあり方を根幹から揺るがす可能性を秘めており、社会に対する大きな問題提起であることから「動物園コミュニティ賞」として取り上げることにいたしました。

所在地
〒078-8205 北海道旭川市東旭川町倉沼
TEL
0166-36-1104
Winner's Voice

受賞の声 ―

赤パネル・青パネル(大きさ25cm×18cm) 旭川市旭山動物園/北海道

ありがとうございました。3部門制覇の意気込みで頑張りました。動物園は「命」を伝える場です。でも同じ種であってもいつ代が変わったのか,いつ死んだのかと言ったマイナスのイメージにつながりかねない情報はほとんど発信されていないのではないでしょうか。生まれたり,新たに来園したり,死んだり,出園したり,動物園ではたくさんの命のドラマがあります。特に喪中看板は「今までありがとう」の意を込めて書いています。

Session Data

2004年の開催データ

募集期間
2004年6月1日 〜 2004年8月31日
応募総数
83通
審査方法
下記の4名のエンリッチメントや動物園に関する専門家、有識者による審査委員会を開催し、決定。

審査委員(五十音順)

  • 正田 陽一東京大学名誉教授/東京動物園協会副会長
  • 松沢 哲郎京都大学霊長類研究所
  • ロニー・アレキサンダー神戸大学国際協力研究科
  • 川端 裕人作家