この度は「正田賞」という大変に栄誉のある賞をいただき誠にありがとうございます。
日本モンキーセンターでは連続講座の参加者の有志で構成された「サークル活動」の中に「エンリッチメントサークル」が存在します。そのサークルから飼育員ではなかなか思い浮かばなかったアイデアが提案されることがあります。今回受賞した取り組みもその一つです。
当園では52歳になるニシゴリラを1頭飼育しており、高齢化による身体能力の衰えが心配されています。その中で嚥下能力の低下に備え、餌の選択の幅を増やす目的でご提案いただいたのが、とろみ調整食や嚥下調整食、栄養調整食といったものでした。健常者は手に取ることが少ないであろう食品に注目できたのは、歯科医師や高齢者介護の従事者などさまざまな職種の方がサークルに集い、高齢な飼育個体のために何ができるかを考えた結果なのだと考えます。
また、実際に当該個体が体調不良で食欲が落ちた際に、投薬が難しくなりました。その時に、この取り組みのおかげで栄養調整食などの嗜好性が高いことがわかっていたこともあり、それらを活用して無事に投薬をできたことにもつながりました。
新たな視点を取り入れることでまた新しい発想が生まれていくということが、飼育動物の福祉向上に直結していくことを今回の活動を通して実感しました。今後増えていくことが想定される高齢個体のために何ができるのか、飼育員だけでなく多くの視点を取り入れて考えていきたいと思います。
また、すべての動物種に適用できるわけではありませんが、高齢個体の餌の選択肢としてこの取り組みが一助になればと思います。
公益財団法人日本モンキーセンター アフリカセンター担当 星野智紀・廣澤麻里・田中ちぐさ・土性亮賀
この度は、大変光栄な「正田賞」をいただき誠にありがとうございます。
特に日本で初めて動物園にボランティア団体を立ち上げられた正田陽一先生にちなんだ賞であることに、深く感動しております。この受賞は、日本モンキーセンターの職員の方々、「タロウさん」、そして私たちエンリッチメントサークルとの長きにわたる関係を温かく評価していただけたものと、心より感謝申し上げます。
私たちが「タロウさん」と尊敬の念を込めて“さん付け”で呼んでいるのは、ニシゴリラのタロウ(オス、52歳)です。私たちエンリッチメントサークルは2016年から活動を開始しましたが、その活動のほとんどはタロウの協力があってこそ実現できました。
タロウは、毎日元気に過ごしていますが、日本で飼育されているオスゴリラの中では最高齢です。そこで、最近の活動では、タロウのような高齢個体に将来生じる可能性のある加齢による摂食・嚥下機能の低下や食欲減退に備え、ヒト用の介護食で培われた知見を応用しています。昨年度の活動では、タロウ、職員の方々、私たちメンバーで、摂食・嚥下機能の低下した人のための飲み込みやすい高カロリーな市販の食品を試食しました。今年度の活動では、バックヤードで治療中の個体にも対象を広げ、ダイエットが必要な個体向けには低カロリーで満腹感を得やすい食品、投薬に役立ちそうな食品などにも注目しています。
今後も、この栄誉を励みに動物達のエンリッチメントのために活動を続ける所存です。次の活動としては、自分たちの試食時の感想やタロウの反応などを記録した「お助け食品図鑑」を製作予定です。タロウをはじめとする動物たちの食べる楽しみとしての食材の選択肢が増え、彼らの健康長寿につながるよう願っています。
また、この受賞をきっかけに日本モンキーセンターに来園者が増えることも期待しています。なぜなら、人間観察が好きなタロウにとって、キレイなおねえさん(※タロウさん基準)がたくさん集まってくれることがエンリッチメントになるのではないかと私たちは考えているからです。
公益財団法人日本モンキーセンター友の会 エンリッチメントサークルメンバー一同