Overview

総評

“エンリッチメント大賞2005”が決定しました!!

みごと受賞となったのは以下の皆様です。おめでとうございます!

Winners

受賞した取り組み

飼育担当者部門 大賞

東京都多摩動物公園東京都

福田愛子さん

ユキヒョウは現在、絶滅の危機に瀕しており、国内でも繁殖例の少ない動物です。そうした状況の中で、同園のみならず、他園館での飼育個体の情報などを資料、先輩、同僚、さらには来園者から収集、分析した結果として2組の繁殖を成功させた努力は賞賛に値します。繁殖の成功は飼育動物に対する環境エンリッチメントの成果の証であると考えます。

所在地
〒191-0042 東京都日野市程久保7-1-1
TEL
042-591-1611
Winner's Voice

受賞の声 ―

この度はすばらしい賞をいただき、驚きと感謝の気持ちでいっぱいです。評価の対象となったユキヒョウのダブル繁殖ですが、シンギズ♂とマユ・ユキ♀の頑張りのおかげで、5頭の仔どもが順調に育っております。

今回の繁殖は、多くの人の協力・援助あってのものです。繁殖に力を入れるため、新しい♀の導入が必要だったのですが、東山動物園と群馬サファリパークのご好意で♀をお借りすることができ、そのうちの1頭が出産にいたりました。園の先輩方には、血統管理の手法を教えてもらったり、繁殖やエンリッチメントの相談にのってもらいました。特に歴代のユキヒョウ担当者にはペアリングの仕方から妊娠出産時の注意事項をアドバイスしてもらうなど、一から十まで教えてもらいました。また、来園者・サポーターの方には、情報・写真・資金の援助をしていただきました。展示場の前に掲示してある写真は提供していただいたものが多いですし、新しい巣箱や仔ども達の遊具はサポーター資金から購入させていただいています。

今後も、ユキヒョウが幸せに、そして動物と人、人と人との和が広がっていくような取り組みを心がけていきたいと思っております。本当にありがとうございました。

東京都多摩動物公園 福田愛子

飼育施設部門 大賞

東京都多摩動物公園東京都

オランウータン舎(スカイウォーク、飛び地)

スミソニアンのオーライン、旭山動物園といしかわ動物園のタワーなど、樹上性のオランウータンの生活を考慮して、樹冠部に相当する高い空間を、ロープを伝うことで利用させる。そうした前例はありましたが、今回の多摩での導入によって、今後のオランウータン舎を新設する際の一つの標準になると思います。また、園内に残されている多摩丘陵を活用した飛び地でのオランウータンの生活は大変に豊かなものであると推測され、評価すべき施設だと思います。

所在地
〒191-0042 東京都日野市程久保7-1-1
TEL
042-591-1611
Winner's Voice

受賞の声 ―

名誉ある賞をいただきありがとうございます。大変うれしい。

オランウータンの新施設は、日本でのオランウータンの繁殖センターとしての役割を果たし、またオランの行動や特徴をいかんなく発揮してもらうために計画しました。特に、樹間を渡るイメージを強調するとともに、移動した後に樹林で自然の生活をおくってもらうことを目的にしています。今回、受賞の最大の理由が、飛び地の設計・施工にあったと聞いていますが、誠にありがたいことです。飛び地には、樹木と草地がありますが、それ以外の餌など、渡るための誘引材料は一切おいていません。オランウータンは、自発的にスカイウォークを渡り、飛び地にいくのです。これは自然の樹林がかれらにとってどれほど魅力的かを示すものであり、同時に多摩動物公園のように丘陵地の自然を生かして設定されている動物園としては、その可能性を最大限に生かす工夫を評価されたものと考えます。それ故に一層うれしい受賞なのです。樹林の保護がこれからの課題になりますが、多くの課題を解決するためにもこれから精進していくつもりですので、よろしくお願いします。ありがとうございました。

東京都多摩動物公園 飼育課長 石田おさむ

来園者施設部門 大賞

千葉市動物公園千葉県

観察シート

レッサーパンダやゴリラのモモタロウの観察シートをはじめ、各種の手作りの観察シートを来園者が気軽に利用できるように蓄積をしてきたことがとても素晴らしいです。子どもたちに動物についての「知識」を与えるのではなく、動物そのものをじっくり観察させようという一貫した姿勢は、現代における動物園のひとつの役割を認識する上でも重要なものであると思われます。

所在地
〒264-0037 千葉市若葉区源町280番地
TEL
043-252-1111
Winner's Voice

受賞の声 ―

このたびは、「来園者部門」でのエンリッチメント大賞をお受けすることができたいへん光栄に存じます。

この「観察シート」類は、5、6年ほど前から試行錯誤つくってきた動物観察用のワークシート類の一部です。この製作目的は、「動物を少しでもよく見てもらう」ためで、動物の成長や展示場の環境変化にあわせて変化・書き換えができるものです。動物観察には、まずその楽しい体験をしてもらうことが大事だと考え、年齢や興味にあわせて、シールを貼ったり○つけをしたり、スケッチをしてもらう、行動を記述するなどさまざまな方式で製作してきました。これらの多くが動物ガイドの時などにあわせて使用してもらうものです。また、記入された観察シートをはりだして、他の来園者に見てもらう機会をもつことも行ってきました。これを機会に、より多くの方が楽しく動物観察できるよう願っています。

千葉市動物公園 (財)千葉市動物公園協会

特別賞

東京都恩賜上野動物園東京都

展示の工夫(カナダヤマアラシ、ナマケモノ)

それぞれの動物の習性を熟知、利用した上で従来の「囲み」の中から動物たちを出して生活を見せる、いわば“オープン展示”ともいえる新しい発想に注目が集まりました。観客の目の前やすぐ頭上に動物がいます。飼育される動物にとっては行動空間の拡大、来園者にとっては動物との距離が圧倒的に縮まるという結果になりました。エンリッチメントと展示の融合という点からも面白い試みです。既存の樹木を活用するという手軽さにより、他園での導入も始まっているとのことで、その影響力も評価できます。

所在地
〒110-8711 東京都台東区上野公園9-83
TEL
03-3828-5171
Winner's Voice

受賞の声 ―

上野動物園の東園から西園へ向かうイソップ橋は、最後の部分が180度カーブを描いて不忍池に向かって降りていく構造になっています。このカーブの中央にはケヤキの大木がそびえており、そこにカナダヤマアラシが棲家を構えています。枝からジャンプしないという習性を生かし、屋外に生えているクスノキの樹上で飼育できることを事前に1年以上確認したうえで、今年の春にこのケヤキに引っ越してきました。おいしいケヤキを食べつくして枯らしてしまうのではないかという一番の心配も杞憂に終わり、来春には新芽を吹いたケヤキにヤマアラシの姿を見ることができそうです。お客様には、木登りに適した鋭い爪や、とげとげの身体を目の前で見ていただくことができ、また彼らにとっても、不忍池から吹く風でゆらゆらと揺れるケヤキの枝先で、暑い夏を快適にすごすことができたように思います。

1983年に来園した2頭のホフマンナマケモノは、4年前まではずっと室内で飼育されていました。試行錯誤を重ねた結果、一部暖かい場所を作ってやることで冬の寒さもしのげることがわかり、屋外で飼育することで毛並みもよくなり、食欲も増すことが確認できました。今年に入って、かれらの10kg近い重さに耐えかねて放飼場を囲う魚網は部分的に破損が激しくなってきました。この穴は、彼らにとってかっこうの脱出場所であり、担当者の目を盗んで外に出ることは、彼らにとっては最高のエンリッチメントでした。そこで、改修にあたり、網の一部を穴のあいたアクリル板にし、外のイチョウの木へあえて自由に脱走できるようにしました。懸垂で移動するナマケモノは、横枝のない太い幹からは下に降りることができないため、木の周りに囲いは必要ありません。行動範囲が広がったことで、ナマケていない素早い動きと経路をすぐに覚える記憶力の高さを再認識させられました。お客様にも、網越しに近くで見るナマケモノより、10m先にいる同じ空間のナマケモノがとても新鮮に映るようで、発見の喜びで今日も歓声があがっています。

今回、かれらの習性を生かした展示を模索しながら進めてきた結果、エンリッチメント大賞特別賞という思ってもみない賞をいただき、本当に感謝しております。かれらの生活を豊かにできたかどうかは果たして永遠の謎ではありますが、見るもの接するものにとっては、多少なりとも心が踊る展示ができたのではないかと思っています。ありがとうございました。

上野動物園 飼育課 (文責 細田孝久)

Session Data

2005年の開催データ

募集期間
2005年7月1日 〜 2005年8月31日
応募総数
77通
審査方法
下記の4名のエンリッチメントや動物園に関する専門家、有識者による審査委員会を開催し、決定。

審査委員(五十音順)

  • 正田 陽一東京大学名誉教授/東京動物園協会副会長
  • 松沢 哲郎京都大学霊長類研究所教授
  • ロニー・アレキサンダー神戸大学国際協力研究科教授
  • 川端 裕人作家