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動物園のオランウータンの環境エンリッチメントの技術開発と野生動物保全活動への応用

オランウータンはきわめて樹上性の高い動物です。動物園ではどうしても観客の視線の高さに合わせた展示になりがちで、本来は地上で過ごすことがめったにないオランウータンが一日の大半を地上で過ごす例が多く見られました。今回の受賞対象となったオランウータンの飼育員の方々は、動物園のオランウータンの飼育環境の改善に取り組んでこられました。
その中で、ロープを使って、空中を自在に移動させるという工夫が生まれました。安価な方法として、使用済みの消防ホースをロープとして利用する試みが促進されました。消防ホースを利用したハンモック製作技術や、消防ホースをひねってつかみやすくする技術(通称「水品巻き」)の開発です。さらに、多摩動物公園のオランウータン施設「スカイウォーク」の事例のように、長いロープをオランウータンが渡って飛び地を利用するという大規模に空中を使った展示にもつながりました。
こうした動物園での取り組みが国際的な注目も浴びました。マレーシア・サバ州で長年に渡り野生オランウータンの研究、保全活動に取り組んできたアンクレナス博士夫妻が、日本の動物園におけるオランウータンの飼育担当者たちによるエンリッチメント技術に着目し、サバ州野生生物局を通じて彼らに保全活動への協力を呼びかけました。現地では、開発により森林が分断され、オランウータンが孤立するという問題が起きています。今回の受賞者4名はその呼びかけに応じ、日本のNGOの協力のもとに、廃材となった消防ホースを現地に持ち込み、分断された生息地の森林をオランウータンが行き来するための吊り橋を製作し設置するなど、実際に現地に赴いて保全活動に取り組みました。2010年7月には、実際に野生のオランウータンがこの吊り橋を渡ることも確認されています。こうした飼育担当者の現地派遣は、勤務する動物園や関係者のバックアップがあって実現したものです。以上、国内の動物園でオランウータンのためのユニークなエンリッチメント技術を開発したこと、それが野生動物保全に応用されたこと、各動物園が飼育担当者を海外の域内保全活動に派遣したことが、今回の受賞のポイントとなりました。
・黒鳥英俊氏の勤務先
東京都上野動物園 教育普及課(とうきょうと うえのどうぶつえん きょういくふきゅうか)
