Overview

総評

“エンリッチメント大賞2006”が決定しました!!

今年のエンリッチメント大賞はコラボレーション(連携、融合、共同)が選定のキーワードとなりました。班のチームワークや園全体の取り組みの姿勢、来園者施設と飼育施設の融合、市民からのアイディア募集など、これまで個別に評価されていた「飼育動物」「飼育担当者」「飼育施設」「来園者」のコラボレーションを感じることができ、動物園や水族館に対する新たな期待が膨らむ審査結果となりました。

みごと受賞となったのは以下の皆様です。おめでとうございます!

Winners

受賞した取り組み

飼育担当者部門 大賞

京都市動物園京都府

高木直子さん、長尾充徳さん、松永雅之さん

ひとつひとつの事例が興味深いエンリッチメントの取り組みでした。それと同時に、3名が同じひとつの班に所属し、それぞれの担当動物に適した環境エンリッチメントを実施するとともに、互いに啓発し協力しているチームワークの良さが評価されました。これからも切磋琢磨されることを期待します。さらに、エンリッチメントを推し進めるためには、老朽化した施設そのものの改善も大切です。京都市動物園の今後に注目しています。

所在地
〒606-8333 京都市左京区岡崎法勝寺町
TEL
075-771-0210
Winner's Voice

受賞の声 ―

今回の受賞を大変光栄に思います。日頃から応援してくださっている来園者の方々に心から感謝申し上げます。

古い・狭い・資金がないという環境ではスタッフ同士のコミュニケーションと人力が大きな資源となります。今回取り上げていただいた3ヵ所はその成果の一部です。これを機にさらに多くの方々が足を運んでくださることを願っています。

私にとって動物園とは「楽しい」が基本だと考えています。今後もこの環境を引き継ぎ動物たちも来園者もそしてスタッフにとっても「楽しい動物園」を目標に励んでいきます。この度は本当にありがとうございました。

京都市動物園 飼育課

高木 直子

この度は、エンリッチメント大賞というすばらしい賞を頂き、ありがとうございました。本当にビックリしました。また、チームとして評価して頂いたことに対しては、とても感謝いたしております。

現在、やる気に満ちあふれた後輩たちに囲まれ、職員一同いろいろな取り組みを行っており、この賞は、職員全員に頂いたものであると理解しております。正直なところ、いま僕がサル舎で行っていることが、本当にエンリッチメントになっているのかは、自分でもよくわかりません。今回対象となった、シロテテナガザルとフサオマキザルは、理解のしかたは違うのですが、霊長目の中でも認知能力に優れ、いろいろな課題を与えると、様々な操作が生まれてきます。きっと野生で生活していても、新しいことなどに直面した時には、彼らなりに色々思考を巡らせ、解決しているのだろうと思われます(あるいは、あきらめる?)。

また、彼らを観察しながら観客の方たちを観ていると、あらためてヒトの能力のすごさに気づかされます。ヒトって本当にすごいんですよ。僕が今、当園のサル舎で一番伝えたいのは、ヒトのすばらしさなのかもしれません。そこから、環境教育などにも繋がっていけばとも考えます。

今回、大賞を頂いたわけですが、まだまだ発展途上の段階で、やりたいこと、やらなければならないことが山積みです。多分、終わりはないんでしょうね。これからも、この賞を誇りとして責任を持ち、当園のスタッフと共に、一歩ずつゆっくりと動物たちと向き合っていこうと思っています。本当にありがとうございました。

京都市動物園 飼育課

長尾 充徳

この度はエンリッチメント大賞というかたちで評価を頂き、ありがとうございます。当園の類人猿舎では、グラウンドに植栽を行い、動物たちがそれを自由に利用できるようにしました。彼らは植物を折ったり抜いたり、またそれを使ってベッドを作ったり食べたりと,非常によく活用しています。またペアリングの時などは個体間の物理的・精神的な緩衝材としての効果もあったのではないかと考えています。

今後も植栽をより充実させ、動物や来園者がよりよい時間を過ごせるよう、展示に取り組んでいきたいと考えています。どうもありがとうございました。

京都市動物園 飼育課 松永 雅之

飼育施設部門 大賞

富山市ファミリーパーク富山県

穴掘りグマの展示

従来の展示場の外側の観客側スペースに、柵とモート(溝)を越えて回廊を作りました。アナグマの穴掘り行動という特性を活かして、その行動空間を広げ、お客さんが目の前で行動観察できる工夫が評価されました。観客の側にせり出す展示方式は、すでにほかの動物で実施されていますが、それらの施設や試みを参考にして、アナグマに適したものを独自の方法で安価に作っています。今後さらに回廊を先に延ばしたり、ほかの動物と立体交差させるなど、よりユニークな取り組みに発展する可能性も秘めています。

所在地
〒930-0151 富山市古沢254番地
TEL
076-434-1234
Winner's Voice

受賞の声 ―

富山市ファミリーパークでは、身近な動物の知識を地域の人に普及することを目的に、日本産動物の飼育展示に努めてきました。今回、受賞の対象となった「穴掘りアナグマ」も日本産動物の普及をささえる重要な展示です。それだけに今回の受賞はとても価値があり、ありがたく思っています。

アナグマの展示は昨年まで、単なるモート形式の展示でした。モート越しに観るアナグマは小さいため、アナグマが前脚や鼻を巧みに使い穴を掘る様子を近くで観察できるように考えたのが「穴掘りアナグマ」でした。

この展示を実現するのための十分な予算はなく、材料をかき集めて「あーでもない、こうでもない」といいながら、職員10人がかりで半月ほどかけてこの展示を製作しました。園内のU字溝を集めセメントで固定し、使い古しのアクリル板を持ち寄り、古いケージのネットを切り、一輪車で土を運び、ペンキを塗り…。それだけに、初めてアナグマが目の前で一生懸命に鼻と前脚を使って穴を掘り、エサを見つけ出しては食べる様子を見たときの感動は今も忘れられません。

来園者からの反応も上々で、今まで素通りされがちだったアナグマが一躍人気者となっています。動物園で動物の何をどのように見せるかを考え、実現のために努力することの重要性と楽しさを実感しております。また、展示方法は常に発展させられる可能性があり、日常の業務でその可能性をさぐっていきたいと思います。

富山市ファミリーパーク 動物課 飼育展示係 山内 洋

来園者施設 部門

札幌市円山動物園北海道

サル山展望レストハウス

レストハウス建設にあたって、飼育担当者の意見を取り入れ、従来から存在していたサル山との融合を図ったユニークさに注目が集まりました。サルとガラス越しに来園者がゆったりと楽しみつつ、環境エンリッチメントについて学べるような工夫も評価できます。レストランや休憩所を飼育施設と単に融合するだけであれば水族館ですでに見かけます。しかし、このレストハウスは、環境エンリッチメントの教育普及を介在させて来園者の休憩と動物展示を融合した新たな試みであり、今後の他園館への影響も期待できるでしょう。

所在地
〒064-0959 札幌市中央区宮ヶ丘3番地1
TEL
011-621-1426
Winner's Voice

受賞の声 ―

2006年度エンリッチメント大賞「来園者施設の部門」をいただき誠にありがとうございます。当園でこの施設を造るにあたり、「動物のみではなく来園者のエンリッチメント」もと考えていたため、この受賞は喜ばしい限りです。4月のオープン以後、沢山の来園者に利用して頂いていますが、逆に教えられることも多く、その中でも「メッセージを伝えるためには、観察する側の環境を整えることも大切である」ということに気づいたのは大きな収穫だったと考えております。今後、この施設から感じ得たものを活かし「居心地の良い」動物園作りに努力していきますので、引き続きご支援いただけますようお願い申し上げます。

札幌市円山動物園 園長 金澤 信治

来園者部門 大賞

埼玉県こども動物自然公園埼玉県

60thズーオリエンテーリング「どうぶつしあわせ大作戦」

園全体で日常的にエンリッチメントに取り組み、それを、オリエンテーリングという親しみやすい手法で来園者に伝えている点が評価されました。チェックポイントには職員手作りのサイン、ハンズオン展示もあり、楽しく学ぶことができる「教育の場」としての役割も果たしています。シートに掲載されている取り組みについて実施後の評価をおこなっているものもあるようですが、他の取り組みについても評価し、それを継続されることを願います。

所在地
〒355-0065 埼玉県東松山市岩殿554
TEL
0493-35-1234
Winner's Voice

受賞の声 ―

当園恒例のイベント「ズーオリエンテーリング」の60回目にあたる「どうぶつしあわせ大作戦」が、2006年エンリッチメント大賞・来園者部門をいただき、大変ありがとうございます。「ズーオリエンテーリング」は20年間続いている人気のイベントで、無料の専用シートをゲートで受け取り、音声指令をきいたらポイントをさがしてミッションを達成するというスタンプラリータイプの期間限定自由参加型のものです。ミッションはスタンプを集める以外にそれぞれの場所に設置された飼育係手作りのハンズオンを体験することも含まれています。

60回目の「どうぶつしあわせ大作戦」では、5ヶ所の動物展示を探し出し、そこで飼育係が試行錯誤したエンリッチメントを確認し、来園者にも同じ体験(ハンズオン)をしてもらいました。この回では飼育係が行っているエンリッチメントを多くの来園者に知ってもらうこと、エンリッチメントという言葉を知ってもらうことが目的でした。さらにきちんと伝えるために飼育担当者もエンリッチメントについて改めて考え、適性や効果を再確認することができました。このイベントではエンリッチメントマークも考案し、イベント期間中だけでなく、終了後の今もそのマークをつけた看板がそれぞれの動物展示の前でエンリッチメントを解説しています。

60回以上も続いているズーオリエンテーリングでは、そのつど飼育係の手作りハンズオンが考え出されます。来園者が楽しく学べる手助けができればとテーマにそったものを作り設置してきました。今まで続けてきた手作りのズーオリエンテーリングが、今回大賞をいただけて、コツコツと重ねてきた結果が報われたようで非常にうれしく思います。

今後は「どうぶつしあわせ大作戦パート2」を計画していますので、さらにエンリッチメントマークのついた展示とハンズオンが増える予定です。

埼玉県こども動物自然公園 展示普及課 田中理恵子

動物園コミュニティ賞

名古屋港水族館愛知県

シャチのクー すこやかプラン大賞

シャチという存在を契機に一般の方々から環境エンリッチメントのアイディアを募集し、実施するという、これまでにない取り組みです。アイディア募集というかたちで、飼育下の動物たちにとっての環境エンリッチメントの重要性への理解を市民に対して広げた点が評価されました。また、水族館における環境エンリッチメントの取り組みの先駆けともなると思われます。実際に、シャチの飼育環境がさまざまなかたちで良いものになることを願っています。

所在地
〒455-0033 名古屋市港区港町1番3号
TEL
052-654-7080(
Winner's Voice

受賞の声 ―

このたびは動物園コミュニティ賞をいただきありがとうございます。

「シャチのクーすこやかプラン大賞」については、北は北海道から南は沖縄まで全国各地の皆様からクーの暮らしをより豊かにするためのアイディアを400通も送っていただきました。アイディアを送ってくださった皆様にも、この場を借りてお礼申し上げます。皆様からいただいたアイディアから、いかにクーが皆様から愛されているかを実感したとともに、貴重なシャチを預かっているのだという感慨もさらに大きくなってきました。そんな中での今回の受賞は私たちにとっても、大きな励みになりました。

これからは、いただいたアイディアを実践していくだけでなく、クーにとってどのような効果をあげているのかを的確に評価していくことも重要だと考えています。そして、その結果を市民の皆様にしっかり伝えていく責任も感じています。これらの活動を通じて、今後もクーが元気で活発な毎日を過ごし、そして皆様に愛されるシャチになっていくように頑張っていきたいと思います。誠にありがとうございました。

名古屋港水族館 飼育展示部 シャチ担当 神田幸司・仙石朋子・福本洋平

Session Data

2006年の開催データ

募集期間
2006年7月1日 〜 2006年8月31日
応募総数
52通
審査方法
下記の4名の環境エンリッチメントや動物園に関する専門家、有識者による書類審査、審査委員会により選定。

審査委員(五十音順)

  • 正田 陽一東京大学名誉教授/東京動物園協会副会長
  • 松沢 哲郎京都大学霊長類研究所教授
  • ロニー・アレキサンダー神戸大学大学院国際協力研究科教授
  • 川端 裕人作家